9月11日、Web広告研究会による「第16回WABフォーラム&Webクリエーション・アウォード受賞式」が行われた。第二部トークセッションでは、「『企業コミュニケーションにおけるインターネットの役割』~Web広告研究会WG(ワーキング・グループ)活動から見えてくるもの~」と題して行われた。


企業サイトへの評価が変わってきた

ワーキンググループでは、インターネット諸問題について関係者すべてに門戸を開き、オープンなスタンスで活動を行っている。今年は「コア・オブ・コミュニケーションズ」という宣言を掲げて活動している。全体にCGM(Consumer Generated Media)の台頭が目立ち、「量的なものから質的に変化させるべき年」(消費者メディア研究WGリーダー横山和幸氏)だという。

企業サイトのマーケティング活用WGリーダー田中秀樹氏(富士通総研)は、「大企業のサイトを中心に、前年度と比べてアクセス数は増加傾向にある。トップページのPV(ページビュー)が52.4%増、サイト全体では67.3%増。アクセス指標の平均値伸び率は2.5倍」と説明。また、「量的に伸びているが、今後は質的に変化させる時」との課題も示した。

同氏によると、Web管理者の約6割が、この1年間で企業のWebサイトに対する「社内評価や重要性認識が高まった」と感じている。しかし、「重要性認識が高い企業は運営予算が増えたが、特に変化ないという企業の予算はほとんど変化がなく、二分化が進んでいる。うまくいっているところとそうでもないところの差は開きつつある」。企業情報サイトと商品サイトのドメインは、前回調査時に比べて分けているところが増加。携帯サイトを開設している企業は36%から59%に増加した。一方、Webサイト運営の課題として、担当者数の不足、見えにくいサイトの効果、運営予算の不足などを挙げている人が多かったという。

「企業ホームページの重要性認識が高まったことで、顧客コミュニケーションや売上間接貢献などが評価され、Webサイトのプロモーションやブランディング機能が重要となった。コンテンツプロモーション以外にもケータイ活用が始まり、Webマスターに求められる役割が変わるという3つの兆しが見られる」と同氏はまとめた。

商品ブランドプロモーション研究WGリーダー吉見大輔氏(NEC)は、商品ブランドサイトの多様化を最近の特徴として挙げた。顧客は商品購入前に商品サイトに訪れることが多く、サイトの訴求方法が多様になってきたという。タイプとして、カタログ型やCMタレント連携型、モニター募集型、連載コンテンツ型、コミュニティ形成型、動画投稿型などを挙げた。

同氏は、「携帯や動画をうまく活用し、商品とネットをどう結び付けていくのかがプロモーションのポイントとなってきている」と最近の傾向をまとめた。また、2007年の主要課題として、商品(サービス)ブランドの構築、育成、新しいコミュニケーション手段への取り組み強化を挙げる企業が多く、他社との差異化、ブランドの向上を目指している傾向が見られるとした。


多様化するライフスタイルを持つ消費者にモバイル広告

ケータイWGリーダー村田幸哉氏(ワールド・ファミリー)は、コミュニケーション手法の多様化に言及した。新聞やテレビなどのマスメディアについて、「従来は単独で十分告知効果があったが、多様化したライフスタイルを持つ消費者には、これまでの画一的なメッセージだけでは十分に理解してもらえない」との見解を示し、コミュニケーション補完メディアとしてのモバイルの必要性を説いた。

同氏によると、携帯電話は「お客様にアクションを起こしてもらう刈り取りメディア」。「現在はPCから資料請求している人が多く、携帯はまだ限定的な使用に止まっているが、クロスメディアでPCと携帯を役割分担したら、携帯から取り込まれた客が増えた」という。「理解や認知度を高めるのは紙媒体であり、実際の顧客獲得はインターネットからくる傾向にあるので、双方のメディアが必要」という認識をまとめた。

Webプロデューサー育成プロジェクトリーダー田実日出翁氏(日本経済広告社)は、企業コミュニケーションにおけるWebプロデューサーの役割の変化について、「以前は自社のサイトをどのように作り、運営するかという段階だった。いまは、投資効果やブランド価値、最新技術への対応、消費者メディアとの関わり方などに関心が移ってきた」と説明した。Webサイトは「人」次第であり、今後はWebプロデューサーの存在が重要となる。最後に同氏は、Webプロデューサーは、社内における目的の再確認、共有する仕組みの整備が大切になるとまとめた。