いよいよ、月周回衛星「かぐや」(SELENE)の打上げが今週実施される。既報の通り、13日の打上げ予定がすでに14日に延期されているが、筆者はもう鹿児島に移動してしまった後だったので、予定通り今日から現地レポートを開始したい。

今日(11日)の現地の天候は雨。時折、強い風を伴って激しく降っている。今回の延期は天候上の理由となっているが、種子島宇宙センターの気象情報によると、12日の注意事項欄に「短時間強雨、(雷)」、13日に「(雷)」とあり、確かに「こりゃだめだ」感が強い。

では14日には回復するかというと、どうもそれも難しいようだ。JAXA発表のプレスリリースにも「14日の打上げの可否については、明日(12日)以降の天候状況等を踏まえ、再度判断する」とあり、場合によっては再延期もあり得る状況だ。現地での打上げ見学を計画している人には、出発直前まで情報を収集することをお勧めしたい。

11日夕方の種子島・西之表。筆者は高速船「ロケット」の最終便で到着した。ちなみに前日までは、長らくいい天気が続いていたそうだ…

鹿児島市内から種子島への高速船は、ロケット・トッピーともに、4月から発着場が南埠頭に移動している。12号機のときまでの北埠頭ではないので注意

「現地までは来られない」という人には、いつも通り、インターネットや街頭でのライブ中継もある。近くに中継会場がないという場合にはネットしか選択肢がないが、なるべくなら、大きな街頭ビジョンで、大勢の人と一緒に見て欲しい。現地の空気が少しは伝わるはずだ。

それにしても、慣れているとは言え、やはり現地での延期というのはガックリくるものである(ちなみに筆者の延期率は100%)。しかも今回、筆者などは手間のかかる1歳の坊主を家に置き去りにして来ており、妻からは「金曜までに帰って来なかったら玄関の鍵を変える」とまで言われている始末。家庭円満のためにも、なるべく一発で上がって欲しいところである。

さて、すでに何度も記事で取り上げてはいるが、ここで改めて、「かぐや」について説明しておきたい。

「かぐや」の目的は、月の起源と進化を解明することだ。月は地球から最も近い天体で、すでに人間が到達までしている。それなのに、まだ謎があるのか? と思う人もいるかもしれないが、事実そうなのだ。例えば起源については「巨大衝突説」が有力とされてはいるものの、まだ決定的とまでは言えない状況。「かぐや」によって、その裏付けとなるデータが得られると期待されている。

そのため、「かぐや」は月の全域に渡って、元素・鉱物分布、表層構造、重力分布、磁場分布などを調べる。搭載する観測機器は、以下の15種類。中には月以外を観測するための機器も含まれており、なかなか欲張った構成と言える。

ミッション 主な目的
1.蛍光X線分光計 月表面のAl/Si/Mg/Fe等の元素分布を調べる
2.ガンマ線分光計 月表面の放射性元素(U/Th/K等)の分布を調べる
3.マルチバンドイメージャ 月表面の鉱物分布を調べる
4.スペクトルプロファイラ 月表面の鉱物組成を精度良く調べる
5.地形カメラ 標高を含む地形データを取得する
6.月レーダサウンダー 月の表層構造(地下数km程度)を調べる
7.レーザ高度計 地形の起伏、高度を精密に測定する
8.月磁場観測装置 月面および月周辺の磁気分布を観測する
9.粒子線計測器 月周辺の高エネルギー放射線、月面からのα線を観測
10.プラズマ観測装置 月周辺の太陽風等による電子とイオンを測定する
11.電波科学 希薄な月電離層を検出する
12.プラズマイメージャ 地球プラズマ圏全体を画像として観測する
13.リレー衛星中継器 月裏側の重力場データを取得する
14.衛星電波源 月重力場を精密に観測する
15.高精細映像取得システム 月面上の「地球の出」等のハイビジョン撮影を行う

人によっては「14種類」と述べる場合もあるが、これは15番目のハイビジョンカメラを含めるかどうかの違いだ。これは広報・啓発的な意味合いが強く、純粋な「科学目的の観測機器」ではないので、搭載の実現には紆余曲折があったようだ。しかし筆者としては、月から送られてくる高精細画像には非常に興味があるし、期待を込めて、ここでは「15種類」という表現にしておきたい。