米BEA Systemsは9月11日(現地時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催されている「BEA World 2007」において、ビジネス・アプリケーションの開発から運用までをカバーする新構想「Project Genesis」を発表した。Genesisは同社のミドルウェア・インフラ技術の集大成ともいえる構想で、ビジネス要求に合わせてロジックの再利用やプロセスの再構成をリアルタイムで柔軟に行うためのインフラを提供する。Genesis実現の第1歩としてリリースされるのがメタデータ・リポジトリの「AquaLogic Registry Repository 3.0」で、同製品を介して開発や各種作業を行うためのコンソール/ビューである「WorkSpace 360」が利用できるようになる。
WorkSpace 360は昨年開催されたBEA World 2006で初めて紹介され、「SOA 360」とともにBEAが目指す次世代インフラの中核技術と位置付けられている。WorkSpace 360の特徴はITマネージャからビジネスマネージャまで、開発者とシステム利用者の両サイドが利用できる統一的なビューを提供する点で、SOAインフラ上に構築されたサービスレポジトリを介し、それぞれの利用者の役割(ロール)に応じたビューが用意される。このWorkSpace 360を利用するための最初のコンポーネントが、同日発表されたAquaLogic Registry Repository 3.0となる。
AquaLogicのリリースでSOAを事業の中核の1つとしたBEAだが、その目標はそれだけにとどまらない。最終的にはシステム上に存在するすべてのアプリケーションを結びつけ、それらを誰もが簡単に作成・変更するためのインフラを構築することにある。同社ではこの構想を「Genesis」と名付け、次世代のアプリケーション開発プラットフォームとして位置付けている。米BEA Systems創業者の1人で、会長兼CEOのAlfred Chuang氏は「従来型のパッケージソフトや開発手法はすでに時代遅れだ。1つのパッケージを購入し、カスタマイズのために多くの時間と予算が浪費されている」と指摘する。同氏が「Dynamic Enterprise Application」の名称で呼ぶ次世代型アプリケーションでは、ビジネスプロセスをそのまま具体化し、変更が容易で柔軟性があり、よりリッチな情報プラットフォームが提供される。SOAはあくまでその手法の1つであり、前述のWorkSpace 360はそれを構成する要素の1つだと同氏は主張する。
壇上で紹介されたWorkSpace 360のデモでは、開発言語等の特に難しいコードを記述せずとも、レポジトリ上から既存のモジュールを引き出してビジュアルツール上で簡単な編集作業を加えるだけで、簡単にビジネスロジックの記述ができる様子が示された。変更した結果はすぐに反映され、再びWorkSpace 360上のビューでデータを見た段階で新しい結果へと切り替わっている。「ビジネスの要求に合わせて、オン・ザ・フライでリアルタイムにプロセスの変更ができるのがGenesisの特徴の1つだ。カスタマイズのために多くの時間を費やしていては、その間にビジネス環境の変化で求める用件も変化してしまう。必要に応じてすぐに結果に反映できることが重要になる」とChuang氏はそのメリットを説明する。
なお、Genesis全体の具体像は、まだ不明な部分が多い。Genesisを構成する具体的な製品名やその提供ロードマップなどは、今後順を追って公開されることになるとみられる。