デルは、ストレージ製品「PowerVault」シリーズの新モデル「PowerVault MD3000i」を発表した。価格(税込)は752,850円から。従来のEthernet環境に接続するだけでストレージシステムの構築ができ、専用インフラを新たに設けたり、専用機器を導入する必要がなく、同社では「iSCSIによるデータ集約・ストレージ統合やIP-SAN構築に最適」としており、できるだけコストを抑えて、iSCSIストレージの利用やIP-SAN環境を構築することを望む中小規模ネットワーク環境や企業、大企業の部門/リモートオフィス、公共機関や教育機関などからの需要を見込んでいる。

「PowerVault MD3000i」は、3.5インチSAS HDDを1筐体あたり、最大15基搭載可能で、最大容量は6TB(400GB×15基)となる。デイジーチェーンにより3つの筐体を接続すれば、最大45基HDD、18TBの容量までをもつことができる。ストレージコントローラはオプションでデュアル構成が可能だ。コントローラごとに512MBのキャッシュを搭載、コントローラあたり1Gbpsイーサネットホスト接続用ポートを2基搭載している。「実際に必要なIT資産、ビジネスの成長度に応じて、ソリューションを徐々に追加していけるスケールアウトができる」(同社)。

ホストとの接続は、直接接続の場合、可用性の高い2つのホスト、あるいは可用性の高くない4つのホストとの接続が可能だ。スイッチを経由する場合は、最大でそれぞれ16のホストとの接続ができる。また、電源、冷却ファンなどを冗長化し、ダウンタイム削減を図っている。

「Windows Server 2003」と「Red Hat Enterprise Linux」や「SUSE Linux」などのLinux OSに対応しており、「Windows Server 2008」への対応も予定している。iSCSIイニシエータはソフトウェアで無償で提供、各種設定や管理がGUIベースで可能なソフトウェア「MD Storage Manager」を標準添付しており、「管理のための作業が大幅に軽減できる」(同社)という。プレミアム機能の「スナップショット」、「バーチャルディスクコピー」による高度なデータ保護機能もオプションで用意している。

2006年から2010年までの間に、世界中を行き来するデジタルデータは161Exa Bytes(10の18乗)から988Exa Bytesにまで膨れ上がるという(IDCの推定による)。このような潮流への対応は企業にとって必須であり、データストレージの重要性がいっそう高まることになる。同社では「従来、大容量ストレージは高価格であり、機能も限定されていた。デルは、この状況を変革していきたい」(米デル ストレージ・プロダクトグループ ハーワード・シュービー シニア・プロダクトマネージャー)としている。同社のストレージ戦略は「シンプル、求めやすい価格、使い安さ」(同)が基本だ。

今回、同社はiSCSIに焦点を当てているが。これは「まず、iSCSIはスタンダードなイーサネットで動作するため、中堅・中小企業でも装備しやすくなる。大手企業はファイバーチャネルを用いてシステムを構築できるだろうが、コストがかなり高く、中堅・中小では、容易なことでなかったのでは」(同)との背景がある。シュービー シニア・プロダクトマネージャーは「イーサネットはコモディティー(汎用製品)化しており、コストがそれほどかからない。1サーバーあたり、1,400ドル程度、節約できる。また、iSCSIはシンプルで使いやすく、これまでのストレージの複雑性の解消にもなる。さらに、マイクロソフト、オラクルなどの主要なアプリケーションにも対応している」と話す。

さらに同社の実験によれば「iSCSIは、1分あたりのトランザクション処理などで、ファイバーチャネルと同等になっており、性能の点でもひけをとらない。iSCSIによる接続は、2009年には、ファイバーチャネルを上回る見込みだ」と指摘、「iSCSIの採用は、タイミングとしても適切ではないか」とみている。同社では、「PowerVault MD3000i」の主な用途として、中小規模のストレージ統合、または、大企業の部門/ワークグループ/リモート向けのSAN環境といったあたりを想定しているが、特に、中堅・中小企業向けの市場開拓を狙う。

シュービー氏は「かつて、ITは電気のようなものと言われていたが、ITの価値は過去5-10年で大きく変化している。今では、ITは戦略的、差別化の要因となっている。しかし、企業がITに投じる予算は、大半が既存システムの維持、運用に割かれている。デルの戦略は、この種のコストを削減し、企業がより先進的な技術に投資できるようにすることだ」と語っている。同社は、データストレージの領域の事業にも重点を置いており、大企業や、データセンター向けのSAN(Storage Area Network)では、米EMCと提携して、製品群を整えているほか、テープバックアップ装置も扱っている。