富士通研究所は5日、IP電話やインターネット上の映像配信など大規模なネットワークサービス向けに、ユーザーの体感品質(QoE: Quality of Experience)を定量化し、"見える化"する技術を業界で初めて開発したと発表した。

QoEとは、音声の聞こえやすさや映像の見やすさなど、ユーザが"感じる"体感品質を示す指標。従来、定量化には高価な専用装置が必要とされ、ネットワークの品質(QoS: Quality of Service)の評価には、ネットワークで情報を運ぶ単位である"IPパケット"の損失や遅延などを指標に行われてきた。

今回、同研究所ではネットワークに汎用パソコン程度の性能の計測装置(計測プローブ)を複数配置し、ネットワーク中でQoEを定量化することに成功。また、これによりIP電話などの音声通信のQoEを高精度に定量化できるため、エコーとノイズに着目した音響分析技術を開発し、周波数スペクトルの類似度を利用して、音声通話に混入したエコーを通常条件で99%、周囲音や相手の声が含まれる場合でも83%という高い確率で瞬時に検出が可能だ。さらに、波形変動の特異点を抽出する技術により、通話音声に混在したノイズも検出できる。

一方、配信映像のQoEについては、映像配信サーバ側で、あらかじめ想定した"パケット損失率"に応じた映像のQoE指標値を映像シーンごとに算出。それがすべての計測プローブに共通のプロファイルとして配布/利用され、実際に計測されたパケット損失率から配信映像のQoE指標値として計測する。高度な演算を映像配信サーバ側で行うため、各計測プローブでは低負荷でリアルタイムに高精度なQoEの算出が可能になるが利点だ。

今回開発された技術により、計測プローブが汎用パソコン程度の性能で実現できるため、映像や音声のQoEを低コストかつ高精度に"見える化"できるのが特長。ネットワークサービスの運用者がQoEをリアルタイムに監視することで、安定したネットワークサービスの提供が期待できる。また、異常を検知した時点の特徴量から、問題発生箇所の詳細な解析が可能になり、ネットワークサービスの品質劣化によりユーザに影響を与える前に、問題を早期に解決するのに役立つ。

富士通研究所では、同技術を今後、体感品質評価向けネットワークマネジメント製品に順次適用していく予定だ。

富士通研究所が開発した体感品質(QoE)の「見える化」技術