日本オラクル 代表取締役社長 新宅正明氏

日本オラクルは3日、米国で7月11日に発表されたデータベースの最新バージョン「Oracle Database 11g」の国内出荷開始を10月23日と発表した。この日に出荷開始されるのはLinux x86版。そのほかに「HP-UX Itanium」「HP-UX PA-RISC」「IBM AIX 5L」「Linux x86-64」「Microsoft Windows(32bit)」「Microsoft Windows x64」「Solaris Operating System(SPARC)」が予定されているが、出荷開始はいずれも2007年中とされている。

ライセンス価格等は基本的に10gと同額だが、新たに追加されたオプション製品等があり、これらについては別途価格が発表されている。

同社の代表取締役社長の新宅正明氏は、11gを「今後5年間を支えるデータベース」とし、メジャーバージョンアップであることを強調した。さらに、これまでのバージョンアップの経緯を振り返り、「8、9では競合他社に対する技術的な優位性を確立し、10ではグリッド対応で大規模システムへの適応能力を高めた」としたのに続き、11gのバージョンアップの特徴を「ユーザーの声(Customer Voice)に対応して行われたバージョンアップ」だとした。11gは"Real Customer Release"だとされ、従来は技術主導で行われてきたバージョンアップが、ユーザーの要望に応える形で行われたのが特徴だという。

Oracleデータベースの30年の歩み

実は、米国で11gが発表された当時は、目玉となるような大型の新機能がない印象だったため、「何をもってメジャーバージョンアップなのか」「なぜ10g Release3ではないのか」との声もあった。しかし、ベンダ側の技術開発の進捗度合いからユーザーの要望への対応へと、バージョンアップの主目的が転換したのであれば、確かにそれは大きなポリシー変更だといえるし、メジャーバージョンアップと呼ぶにふさわしい大きな変化だとも考えられる。米国での発表から1カ月以上が経過し、その間にメッセージがより練り込まれた印象を受けた。

日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏

一方、11gの新機能の概要を紹介した同社の常務執行役員 システム製品統括本部長の三澤智光氏は、目玉となりうる新機能が満載されている、という趣旨のプレゼンテーションを行い、見事な補完関係を成していた。

同氏はまず、特に日本ではIT投資の約80%が既存システムの運用/保守に費やされている現状を調査会社のデータなどに基づいて紹介し、「攻めのIT投資額を増やしていく」ことが重要な課題だという認識を示した。そのためには、「IT全般のライフサイクルを改善し、高頻度かつ迅速な変更を可能にする」必要があるという。

そこで同氏が挙げたのが、システムの変更に伴って必須となる「テスト」の問題だ。十分なテストを行うには多大な労力とコストを要するのが現状で、これがユーザーがシステムの変更に消極的になる大きな原因だという。新機能である"Real Application Testing"では、本番環境からキャプチャしたワークロードに基づいてテストを行えるため、従来テスト用のワークロードの作成に平均120日ほど要していたのが2日で完了するという。

また、テストで利用されるワークロードが本番環境から抽出したものであり、特性が本番と同一であることから、より実態に即したテストが実施できる点もメリットだという。さらに、"Oracle Data Guard"の強化によって災害復旧用のスタンバイデータベースをテスト環境として流用可能、など、テスト環境が大幅に改善されたのが11gの特徴となる。このほかにも、情報ライフサイクル管理(ILM)、基本機能の向上、データウェアハウスの進化などに言及し、さまざまな機能が競合製品を更に引き離す技術的進歩を遂げていることを強調した。

11gの目標は「Real Customer Release…真に顧客のためのリリース」

目玉機能の「Real Application Testing」では、本番環境のワークロードをすべてテスト環境で再現できるという

「Oracle Data Guard」によりスタンバイデータベースをテスト環境として使用可能に

「Oracle Active Data Guard」によりレポーティング処理やバックアップ取得を災害対策サイトにオフロード

障害解析の自動化

データウェアハウスの性能向上

なお、11gから新たに追加された新オプション製品は以下の通り。

  • Real Application Testing
    125万円/Processor、2万5,000円/Named User Plus
  • Advanced Compression
    125万円/Processor、2万5,000円/Named User Plus
  • Active Data Guard
    62万5,000円/Processor、1万2,500円/Named User Plus
  • Total Recall
    62万5,000円/Processor、1万2,500円/Named User Plus

今後の事業目標として、三澤氏は「10gのリリースの1年後の9と10の出荷比率は10gが30%ほどだった」と明かし、11gでは「1年後の出荷比率を50%にする」とした。新宅氏は「メインフレームやLinux、SMBなどの新市場を開拓することで市場全体の成長を図ること」が大目標だとしつつ、シェアの成長に関しては「現在50 - 55%と言われているシェアを60%にしたい」と語っている。