16日から発生したSkypeのログイン障害は、Skypeソフトのバグと想定外の事態という2つの問題が重なったことが原因だった――24日に開催されたSkype ProとSkype 3.5の説明会で、事の顛末が明らかにされた。現在、この問題は解消されており、同じ問題での障害発生の可能性は「ゼロに近い」(Skype日本オフィス岩田真一ジェネラルマネージャー)という。
二重の問題で発生した障害
Skype日本オフィス ジェネラルマネージャーの岩田真一氏 |
問題の事象は、米国時間16日からSkypeにログインしようとしても失敗する障害が相次ぎ、全世界2億2,000万ユーザー(6月末現在)の多くがSkypeを利用できなくなったというもの。当初は、同14日に配信が始まったWindows Updateが原因と見られたが、その後、Windows Updateは問題の引き金にすぎないということが明らかになった。
Skypeは内部で、ユーザーの1%未満に「スーパーノード」という役割を割り振っている。スーパーノードはランダムに選ばれ、各スーパーノードが配下のユーザーを管理する、という仕組みを採用している。このような仕組みにすることで、大規模な設備投資が不要になるというメリットを享受できる。
しかし今回、このスーパーノードがWindows Updateによって一斉に再起動。通常はスーパーノードが切断されると別のスーパーノードが自動的に設定されるはずだが、これがSkypeのバグによりうまく動作しなかった。ランダムに選ばれるスーパーノードが、Windows Updateによってたまたま近いタイミングで再起動されたことが被害を大きくした。
これに対してSkypeでは、減少したスーパーノードの数を戻そうと追加処理を実施。しかし、それを上回る勢いでユーザーが一斉にログインを行ったため、追加したスーパーノードがそれに耐えられず「スーパーノードが死んでいった」(岩田氏)。この一斉ログインが想定外の事態とのことで、今回の一件では短時間に集中するログイン処理に耐えられないという問題も露呈した。
Skypeでは、米Microsoftと協議し、Windows Updateの問題ではなく、Skype自体に問題があったと結論付けている。14日のWindows Updateから16日の障害発生までにタイムラグがあった理由について岩田氏は「分からない」としているが、ログイン障害が発生する直前からメッセージが送れないなどの問題も発生していたそうで、障害が順次大きくなっていったことが報告されているという。
これらの問題に対して、Skype側ではすでに対策を施しており、同じ原因による障害発生は起こらないと岩田氏は断言している。
Skype Proとは
今年6月からスタートしたSkypeの有料サービス「Skype Pro」は、月額300円のプレミアムサービスで、「ヘビーユーザー向けのパッケージ」(同)として位置づけられる。Skype Proにはいくつかのサービスがセットになっているが、その中でも興味深いのが国内固定電話への「分刻みの課金」の無料サービス。
このサービスでは、極論すれば国内固定電話の通話がSkypeの月額料金だけで使い放題になる(実際は2,000分/月まで)。ところが、日本ではNTTへの接続料金の関係上、月額300円では収益が出ないため、このサービスに非対応となっている。
しかし岩田氏は国内でもこのサービスへ早急に対応したい考えを示しており、現在調査を進め、たとえば(1)月額料金を上げる(2)1カ月の通話可能分数を短くする――などといった方向性を検討しているそうだ。
逆にSkype Proに含まれるサービスが「To Go」。これは、国内電話番号(050で始めるIP電話番号)を購入し、この番号に対してたとえば「海外本社の上司の携帯電話」「海外出張中の夫の電話番号」といった海外の一般電話番号を割り当てる。すると、日本国内から050番号へ発信する場合の通話料(プラスSkypeOut通話料)で割り当てた番号に対して国際電話ができる、というもの。海外の特定の電話番号に国際電話をかけることが多ければ多いほど得になるサービスだ。
現在、Skypeは全世界で2億ユーザーを越え、国内でも約570万ユーザーを獲得(7月末現在)。岩田氏は感覚的な数値と断りを入れつつ、「1日9,000~11,000ユーザーずつ増えている」という。ユーザーの増加率も上昇しており、順調にいけば年末までに800万ユーザーは突破できるとしている。
また、全世界では登録ユーザーのおよそ3割が法人ユーザーで、国内でも四半期に1度のペースでビジネスユーザー向けのセミナーを開催していき、法人ユーザーを確保していきたい考えだ。