8月19日~21日(米国時間)の3日間、プロセッサに関する国際学会「Hot Chips 19」が開催された。21日のセッションでは、IntelのRumi Zahir氏が同社が開発中のSoC(System on Chip)の「Tolapai」(開発コード)について発表した。IntelがTolapaiを開発しているというニュースは今年の2月にも流れ、4月に中国の北京で開催されたIDF Beijing 2007でも話題に上った。今回のHot Chips 19では、Tolapaiの中身の詳細について、初めて発表されることとなった。

「Tolapai」について発表するIntelのRumi Zahir氏

TolapaiはPentium Mをコアとして、メモリコントローラとPCI Express、ギガビットEthernet、通信回線用のTDMなどの各種のインタフェースと、SATAやUSBなどをサポートするICH(I/O Controller Hub)をワンチップ化したものである。そして、Acceleration Service Unit(ASU)と呼ぶセキュリティ機能のアクセラレータを内蔵し、3DES、AESなどの秘密鍵暗号、MD5、SHA-xなどのハッシュ、RSA、DSAなどの公開鍵暗号を高速に処理することができる。なお、ASU部は256Kバイトのローカルメモリを内蔵している。

Tolapaiの用途は幅広いが、セキュアな通信向けというのが第一のようである。そのほか、組み込み機器などでも利用できるという。

発表によると、Tolapaiは256KバイトのL2キャッシュを内蔵し、動作クロックが600MHz、1066MHz、1200MHzの3種類を予定している。トランジスタ数は148Mと発表されたが、チップサイズや写真などは公表されなかった。TDP(熱設計消費電力)は、13~20Wを少し超えるくらいで、ノートPC用のCPUと同程度である。メモリはDDR2 400/533/667/800をサポートし、ECC機能を備えている。

メモリ空間は、CPU専用部分、アクセラレータとCPUが共用する領域、アクセラレータ専用の領域に区分されている。内部のアーキテクチャとしては、ギガビットEthernetのポートからDMAを使用して、メモリとの間で高速なデータ転送が可能であるほか、パケットフィルタリングや暗号化といった処理を効率よく行えるようになっている。

IPsecの通信処理を行う場合、一般的なCPUにMCHとICHを付け、PCIバスに接続した暗号化アクセラレータを使うと、CPUのリソースを100%使い切っても200Mbpsの性能しか得られない。しかしTolapaiの場合では、1600Mbpsと8倍の性能で、かつCPUのリソースは10%しか使われないので、他の処理もこなすことができる。また、一般的なCPUを使うシステムでは、ボードの面積は約200cm2にもなり、31Wの電力を消費する。一方、Tolapaiをベースとしたシステムでは、ボード面積はほぼ半分で、消費電力も25Wと低いという比較が示された。

なお、Intelは1990年代の終わりごろに「Timna」というプロセッサを開発していたが、2000年にはそれを断念し、それ以降はメモリコントローラや各種I/Oインタフェースをワンチップ化した製品は出荷していない。x86アーキテクチャをとる低消費電力の組み込みCPUの分野では、Advanced Micro Devices(AMD)の「Geode」やVIA Technologiesの「C7」などがあるが、Tolapaiはこれらの強力なライバルになると考えられる。