情報処理推進機構(IPA)は27日、2007年度上期全体事業プレス説明会を開き、オープンソースソフトウェアに関する多様な情報を一元的、体系的に集積したデータベース「OSS iPedia」の利用実績などを報告するとともに、暗号技術や未踏ソフトウェア創造事業など、今後取り組みの強化を予定している事業について説明した。
説明会ではまず、IPA理事長の藤原武平太氏が、事業全体に関して説明した。藤原氏は、IPAにとって本年度は独立行政法人化以来の最初の中期計画が終了する年度であり、大きな節目になるとの認識を示した上で、事業内容全体について、独法化前に事業の中心だった個別企業への支援から、ソフトウェアの性能判定ツールやデータベースなどを、開発者やユーザーに提供する方向に舵を切ったと述べた。
「OSS iPedia」は、OSSの導入事例情報や性能評価情報などを検索できる機能を持ち、2006年5月の公開以来、1日1万8,000回以上のアクセスを集めている。特に、OSSの性能・信頼性を評価するテストツールが人気を集めており、米国やドイツ、フランス、中国などからの利用も多いという。
藤原氏の説明の後、IPAが今後重点的に取り組んでいく以下の3つの事業について、IPAの各担当者から説明があった。
- GPL(General Public License)の改訂
- 暗号技術
- 未踏ソフトウェア創造事業
GPLは、FSF(Free Software Foundation)が規定したライセンス文章で、Linuxなどの多くのOSSが採用しており、現在はバージョン2が広く用いられている。GPLの特徴としては、ソースコードの提供やライセンスの波及を義務付けられていることがあげられる。
現在、GPLバージョン3を策定する作業が進んでいるが、当初案(1stドラフト)では、情報家電などの多くで採用されているDRM(電子的著作権管理)への対抗条項などがあり、IPAによれば「非常に過激」な内容だった。こうした件に関し、IPAでは、2006年3月にOSSセンターにリーガルチームを設立し、産業界関係者らと意見交換を行う一方、GPL v3の草稿作成を行ったEben Moglen氏を同年11月に訪問し、DRM対抗条項などの緩和について合意を得た。IPAではさらに、2007年3月に同氏を再度訪問し、懸念点に関する解釈について明文化する方向で合意したという。
またIPAでは、重点的取り組みとして、量子暗号技術の研究を進めている。米国やスイスの企業が同技術を使って製品化を果たしており、こうした動きに対応するため、IPAは今年10月1日-3日の3日間、東京都千代田区の秋葉原コンベンションセンターで、「国際量子暗号会議」の開催を予定している。
説明会の最後には、IPAが行っている「未踏ソフトウェア創造事業」が紹介された。同事業は次世代のIT市場創出に貢献するような技術、またはビジネスシーズを有した個人あるいはグループを支援する事業で、2000年から開始された。今年のI期までに、28歳以下のユースを含め、639件を支援してきたという。IPAでは、起業へのフォローアップなどを充実させることで、今後さらに同事業を発展させたいとしている。