韓国政府の産業資源部とLG.Philips LCD(以下、LPL)の安養研究所は、溶液型の有機半導体を使用したLCD(液晶ディスプレイ)パネルを開発したと発表した。これは自由に折り曲げられるフレキシブルディスプレイとなっており、フルカラー映像にも対応。また、低コストで生産できるという。
このフレキシブルディスプレイは、産業資源部の「21世紀フロンティアディスプレイ技術開発事業」の一環として進められている「大型有機ディスプレイ開発」課題の成果として発表されたものである。なお、21世紀フロンティアディスプレイ技術開発事業は、ITや科学技術など主要な技術分野の発展を目指し、韓国政府が進めている「21Cフロンティア研究開発事業」の1分野となっている。
これまで、フレキシブルディスプレイは「折り曲げられる」という性質上、金属やガラス、シリコン半導体といった無機物の材料の代わりに、プラスチック製の基板や有機半導体、有機絶縁体など柔軟性のある材料を使って新たなプロセスを開発することが必須とされていた。
ところが産業資源部によると「これまで開発されてたフレキシブルディスプレイでは、有機半導体を既存の真空蒸着方式を利用して製造していたが、これでは多くの場合において、高価な装置が必要だった。あるいは白黒画面のものしか製造できないという課題があった」という。今回の技術開発が行われることとなったきっかけは、ここにあるといえる。
今回開発されたフレキシブルディスプレイに利用されている溶液型の有機半導体は、既存のプリンティングプロセスと同程度という低いコストでの製造が可能となるという。また独自の微細パターンプロセスおよびTFT構造を通じて、86ppi(pixel per inch)という高解像度を実現した。これにより15型のXGAフルカラーといった、大型かつ高解像度のフレキシブルディスプレイによる映像の表示が可能となる。
今回のフレキシブルディスプレイ開発のため、同研究所では金属材料を除外し、半導体、絶縁物、保護材料などのすべてに溶液型の有機材料を使用した。また、すべてのプロセスにおいて温度を150度以下にする低温プロセスを開発している。これによりプラスチック基板を使用できるようにした。
産業資源部では、「現在よりも解像度を高めてSXGA級の技術を開発し、製品化が可能なフレキシブルディスプレイを開発していきたい」と抱負を述べている。