テルムと東芝、鴻池組は2日、テルムが4月下旬から北九州市若松区に建設を始めていた国内初のPCB汚染土壌浄化施設が完成したことを、3社連名で発表した。6日に開所式を行い、以後、本格的な商用運転を開始する予定。東芝および鴻池組は、装置の運転管理などの技術的な面でサポートを行う予定。

現在、全国でPCBなどの土壌汚染が顕在化しているが、国内にこれらを処理できる施設がなく、安全で浄化性能が優れた処理施設が求められていた。3社はこの状況を鑑み、同施設の建設を計画、「安心して暮らせる環境を保全できるように積極的に取り組む」(3社)という。

同施設は、「ジオスチーム法」と呼ばれる方式を採用。同法は2001年に東芝が開発した技術で、2004年からテルム、鴻池組と共に実用化に取り組んできたという。ジオスチーム法は、土壌を加熱し汚染物を蒸発させる方式(間接熱脱着法)により、土壌からPCBなどの汚染物を除去する工程と、土壌から蒸発させた汚染物質を水蒸気で分解する方法(水蒸気分解法)により無害化するという2つの工程で構成されている。また、同法は汚染物の除去から分解までを一連のシステム内で行うめ、装置外へ汚染物を排出しないことが特徴だ。さらに、溶剤や薬品を用いないため、有害物や危険物などを取り扱う必要がないとされる。

ジオスチーム法の原理

3社は2005年11月より「北九州エコタウン実証研究エリア」内でジオスチーム法を用いたPCB汚染土壌浄化の実証試験を行ってきた。環境省「平成17年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」においては、PCB汚染土壌を対象として分解率・除去率などの浄化性能、安全性、周辺環境への負荷などについて検証を行った結果、実用レベルでの使用可能と評価されたという。また、国土交通省「鶴見川多目的遊水地土壌無害化処理実験」では、PCBなどを含む異物混入土について実証試験も行った。そして、今回の事業実施に伴い、3月26日に北九州市と環境保全協定を締結している。

今回完成した処理施設は、上記の実証実験で安全性と浄化性能を確認したものと同一のシステムであり、恒常的に稼動するPCB汚染土壌の拠点型処理施設としては全国初となる。当面の処理規模は7.2t/日、年間処理量としては、1,700tを予定している。また、この技術で浄化された土壌は、土木原料やセメント原料などとしてリサイクルを計画している。

この施設の運営は、東芝100%出資子会社のテルムが行うが、鴻池組が間接熱脱着装置、東芝が水蒸気分解装置の運転管理面などの技術支援を行う予定としている。