EMCジャパンの諸星俊男社長

EMCジャパンは日本市場での中長期的戦略を示し、2008年度にストレージ製品ハードのシェアを10 - 15%に、同ソフトは15 - 20%にすることを目標とし、「2010年には情報インフラの市場で国内のトップ企業を目指す。企業内のデータ保護/保存/活用/最適化の4つの分野でナンバーワンになる。市場拡大の2倍の速度で成長する」(同社の諸星俊男社長)としている。ハードだけでなく、ソリューションの提供からコンサルティングまでを担い、「製品の日本語化ではなく、日本化を進める」(同)ことで、支持を集めたい考えだ。

この7月1日に、同社社長と同時に、米EMCの副社長にも就任した諸星氏は「全世界の情報量は爆発的に増加しており、2010年には986EB(エクサバイト: 10の18乗バイト)にまでなると予測されている。EMCの事業はこれまで、データ保存に集中していたが、保護、セキュリティ、活用、さらには、最適化までを扱う情報インフラの総合ベンダを目指す」と話し「事実として、EMCは全体では、ハードの売り上げは43%、ソフトは41%、保守が16%であり、ハード依存度は低くなっている」と強調する。

同社は、データストレージ装置のベンダとして発展してきたが、2003年以降「戦略を充実させるため」ドキュメンタム、レガート、VMware、RSA、Avamarなど多数の企業を買収、合併して、さまざまな技術を手に入れている。Avamarは、重複を除外しながらバックアップをしていくdedupulicationと呼ばれる技術を保有している。この技術により、無駄な複製を省き、データ容量を縮減し、データストレージの利用効率を高め、日々進む「情報爆発」に対処していくという。これらのような幅広い技術を適用しながら、「データ保護」のみのベンダから、総合情報インフラベンダへの転進を図るのが同社の基本戦略だ。

「保護」「保存」「活用」「最適化」と、同社は事業領域を4つに分類、保護の分野では「バックアップ・リカバリ&アーカイブ(BuRA: Backup Recovery & Archive)」ビジネスを拡大するとともに、活用の分野では「コンテンツ管理&アーカイブ(CM&A: Content Management & Archive)」ビジネス市場の構築と拡大を図る。最適化では、仮想化やリソース管理に注目している。

これら4つの領域でナンバー1を目指す

諸星社長はこうした姿勢とともに「日本が重要」と強調する。「日本化よりグローバル化に重点を置いて効率化を進展させる策を採る企業もあるが、要はバランスの問題だ。完全な日本化というのもコストはかかるが、海外のものを日本にもってきて、そのまま使え、というのはどうか。EMCは従来、グローバルにほとんど同じものを提供しようとする傾向があったが、世界で第2位の規模をもつ日本市場で成功するためには、それだけでは通用しない。これは米国本社に伝え、理解を得た」

また「外資系企業は、サービス/サポートが(国内企業に比べ)十分ではない、といわれる面があるが、国内ベンダに負けない、同じ水準のサービス/サポートができるような体制を作り上げ、顧客満足度を高めていきたい」としている。さらにソリューションの展開では「要員を増やすことと、社内の意識を変えることだ」と指摘、ハードを売った後のサービスというよりは「サービス、コンサルティングを単独でさらに売れる体制」を築く意向だ。諸星社長は「海外と比べ低い、日本でのシェア向上させることがひとつの使命だ。EMCの優位性は、ストレージのソリューションだけでなく、コンサルティングなどもできる全体的なソリューションを提供できることだ。EMCはサーバをもっていないわけだが、さまざまな環境との接続を得意としている。これは、サーバーをもっているベンダーのストレージより強い」と述べる。また、パートナーとの協力関係強化も課題だ。

諸星社長は富士通の出身で、パーソナルビジネス本部 パーソナルシステム事業部開発推進部担当部長などを歴任、2003年にはFujitsu Computer Systems Corporationの社長兼CEOに就任、2007年4月には、経営執行役兼グローバル戦略本部担当の要職に就いていた。米国での経験が長い新社長は「米国では、トップは内部固めを担い、ナンバー2が営業に飛び回ることが多い」が「自分が営業で飛び回っていた。(日本でも)外との関係を強めたい」と語る。1カ月ですでに400枚の名刺を使い果たした。

EMCジャパンが理想とする企業の姿としては「顧客、パートナーが最も信頼できる企業、社員が長期間働きたいと思える企業」とする。また「外資系企業のEMCジャパンではなく、日本企業としてのEMCになる。日本語化でなく日本化。EMCジャパンのカルチャーを作る」ことが同社の成長にもつながるとの考えだ。