ドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本孝昭氏 |
ビジネスフォーラム主催の「事例にみる"見える化/改善活動"実践セミナー~仕組み(ノウハウ)から真の企業DNA(現場革新力)へ~」。27日には、ドリーム・アーツの代表取締役社長 山本孝昭氏による基調講演「Co-Innovation:現場からの協働革新とICT」が行われた。 山本氏が代表取締役社長を務めるドリーム・アーツは、オフィスの生産性、創造性の向上を支援する製品/サービスを提供するソリューションプロバイダ。「なぜ日本のホワイトカラーの競争力が国際比較で弱いのか?」とという疑問を起点に、ソリューション企業としての立場から、日本の生産現場の実情と問題点が語られた。
21世紀型ビジネスは"創造性重視"が成功のカギ
山本氏はまず、日本のホワイトカラーの競争力について、「弱いはずがない」と単刀直入に述べた。ただし、国際的に見た場合、日本は残業時間が極端に長く、これ以上長く働けないというレベルまできており、消費者労働が非効率的であることは否定できないという。そういう意味では、効率を上げる余地は十分に残されているが、高度化した最新のテクノロジをいち早く効率的にキャッチアップしてスケールモデルにしていくというこれまでの20世紀型工業化社会を前提にしたやり方は「すでに限界に来ている」と指摘し、これからの21世紀型知識社会においては、"効率"という観点から"創造性"へと変わっていかなければならない状況にあることを提言した。
また、山本氏が率いるドリーム・アーツの新しい価値創造の基準として、2007年のはじめに掲げた"あこばた"という標語を紹介。「"あ"は安心感、"こ"は心地よさ、"ば"は抜群の便利さ、"た"は楽しさ」とし、技術の先に新しいビジネス的な極みが見えてくるという時代を脱却する必要性を強調。例として「iPhoneで使われているのは実はもう技術的には枯れているもの。すごいのは技術ではなくコンセプト。それがあるから、あそこまで製品を出し続けられる。彼らがやっているのはまさに21世紀型のビジネス。どういう価値提供をしていくかだ」と、技術を延長したサービス展開ではなく、創造性を重視した象徴的な成功例として、Appleの成功を挙げた。
また、同氏は実務現場における業務について、「Routine(定型/ルーチン)」「Core Work(主業務)」「Ad-hoc(非定型/突発・随時)」を縦軸に、「Misc.Work(付随業務・雑務)」を横軸に、4項目に分類したマトリックス図を紹介。現在の日本の労働現場の業務は、「Misc.Work(付随業務・雑務)」の領域が目いっぱいの状態で「Core Work(主業務)」を圧迫し、想像性を発揮するのがそもそも困難な状態にあると指摘した。その原因として、「情報とコミュニケーションの洪水化」を挙げ、特に電子メールやWeb系の業務システムが元凶になっていると述べた。
さらに、現場業務の分類を「Routine(定型/ルーチン)」と「Core Work(主業務)」の領域が「基幹系業務システム」、それ以外の領域を「情報共有・活用系システム(ICTシステム)」に置き換えた図を解説。基幹系業務システムが省人化を目的に完全に構造化されたデータ・情報とコミュニケーションであるのに対して、情報共有・活用系システムは構造化されておらず、人による業務のパフォーマンスをどう向上するかをテーマとしたソリューションだと対比。これをカバーするソリューションとして、ドリーム・アーツのビジネスコックピット型統合グループウェア「INSUITE」、業務ソリューション製品群「ひびき」が紹介された。
加えて、「想像性にはアナログ的な活動が大切」と話した上で、日本の労働制の問題解決への課題を「考える時間をどう確保するか」だとし、「パソコンに拘束される時間を最小化」を実現するものとして、同社の製品の利点を説明した。
"見える"だけでなく"気づく"ことの重要性
最後に、今回のテーマである"見える化"について、単なる可視化ではなく、それが"気づき"になり、自発的に行動に結びつくものでなければ意味がないと強調。さらに、行動に結びつくような"見える化"を取捨選択した場合にも、多くの問題が残るとし、そうしたときにポイントとなるのが、周囲の状況を把握しながら自分の役割を実行する"コックピット化"だと語った。
さらに、もうひとつ重要なポイントとして、"ケハイの共有"を挙げ、ネットワークの延長で情報をやり取りしている状況が増えてきているなかで、周囲の気配を感じにくくなっている現状を指摘。"ケハイの共有"は、潜在化した問題をいち早くキャッチし、手を打つことを可能にする重要な要素であると語った。またICTは、そのために必要な組織内での対話など、アナログ的な時間を増やし、その時間の質を向上するためのツールとして、本来活用すべきものだと提言した。