IBM Corporation, Lotus Software, General Manager マイク・ローディン氏

日本IBMは31日、「IBM Lotus Notes/Lotus Domino」の新製品となる「IBM Lotus Notes/Lotus Domino 8(以下、Lotus Notes/Domino 8)」の提供を開始すると発表した。Lotus Notes/DominoはIBMの展開するコラボレーション製品ポートフォリオのひとつで、ビジネスにおけるコラボレーションを円滑に行うためのさまざまな機能を提供する。今回出荷が開始されたのは英語版で、日本語版については9月11日(メディア版は10月10日)より提供される。

IBM Corporation, Lotus Software, General Managerのマイク・ローディン(Mike Rhodin)氏は、新たに送り出すLotus Notes/Domino 8について「"次世代のコラボレーション"を実現するもの」と表現している。すなわち、オープンな標準に基づき、生産性を高めるための様々なツール、リアルタイムな機能を取り込むことで、"コラボレーション"という言葉が一段上の内容を意味するようになったという。

Lotus Notes/Domino 8は、次に挙げる4つの特徴を持つ。

  1. オープンソースの開発環境であるEclipseに準拠
  2. 新しい開発手法を採用
  3. オープンなXMLファイル形式である「ODF」に対応したオフィスソフト機能を搭載
  4. 過去の資産をそのまま継承できる設計

Eclipseはオープンソースソフトウェアとして開発されている統合開発環境であり、JavaアプリケーションやWebアプリケーションの開発を中心として、世界中で広く利用されている。Lotus Notes/Domino 8はこのEclipseを基盤に構築されており、これによって既存のNotesが持つ高い生産性を維持した上で、他のアプリケーションとの連携を容易に行えるようになったという。

たとえば、Lotus Notes/Domino 8と社外のアプリケーションやWebアプリケーションをマッシュアップして、クライアント側であたかもひとつのアプリケーションであるかのように動かすことができる。これにより、これまでNotes内でのみ利用可能だったデータを、WebやJavaのアプリケーションでも自由に使用できるようになる。

図1は、Lotus Notes/Domino 8上でNotesデータベースとWebアプリケーションとのマッシュアップを実現したデモ画面である。左側はNotesのデータベースに格納された企業情報を表示しており、右上ではそれをYahoo!ファイナンスのサービスに渡してファイナンス情報を表示している。右下では会社の所在地をGoogle Maps上に表示する。

図1 Lotus Notes/Domino 8を利用したマッシュアップの例

2つめの特徴である"新しい開発手法"とは、ユーザからのフィードバックや「ペルソナ手法」を駆使し、利用者視点をベースとして製品を構築したことを指す。ペルソナ手法とは、仮想的なユーザを詳細にデザインし、そのユーザが利用することを想定して製品開発を進める手法だ。これを、日本も含めて2,000人以上のユーザに対して実施したという。この開発手法により、ユーザインタフェースの操作性が格段に向上している。

図2 操作性が向上したLotus Notes/Domino 8のメールクライアント

3つめの特徴は、オープンな標準を推奨する業界の動向に沿ったものと言える。ODF(Open Document Format)はXML関連技術の標準化団体であるOASISによって策定された、オフィススイートのためのファイル形式。Lotus Notes/Domino 8にはODFに対応したワープロや表計算、プレゼンテーションなどのオフィス機能が標準で搭載されており、他のオフィス製品を使わなくてもこれらの文書の作成や編集が可能となっている。

最後に挙げられた特徴である"資産を継承する設計"とはすなわち過去のバージョンとの互換性の確保を指すもの。これについて同社ソフトウェア事業 Lotus事業部長 澤田千尋氏は、「Lotus Softwareの基本理念であり、本来ならば触れるまでもない当たり前のこと」だと強調している。新しいLotus Notes/Dominoは過去のバージョンに対して基盤部分から非常に大きく変更されているが、それでもその基本理念に変わりはないという。

日本IBM株式会社 ソフトウェア事業 Lotus事業部長 澤田千尋氏

日本IBMでは、Lotus Notes/Domino 8の出荷に合わせて新しいパートナープログラム「Lotus Notes/Domino 8 Readyプログラム」を開始するという。これはLotus Notes/Domino 8対応のパッケージアプリケーションやソリュ-ションを構築したビジネスパートナーと共同でマーケティングプランを作成/実施するプログラム。IBMからは共同での販売促進やマーケティング支援活動を行っていくという。また、JavaベースのコンポジットアプリケーションにおいてLotus Notes/Domino 8 Readyの認定を取得したパートナーについては、「コンポジットアプリケーションパートナー」として開発技術支援も行う。

その他、パートナー向けの教育セミナーを開催し、11月より開始予定の「Notes/Domino 8認定試験」の合格支援も行っていく予定だという。これについては、まず9月14日より技術者向けの「Notes/Domino 8テクニカルセミナー」を無償で月1回程度開催、次いで10月より「Notes/Domino 8アップデートセミナー」および「Notes/Domino 8コンポジットアプリケーション開発研修」を有償で月1回程度の頻度で開催するとのことだ。

日本IBMではこの日、Notes/Domino 8以外に「IBM Lotus Connections」と「IBM Lotus Quicker」という2つの新製品を発表している。これらはNotes/Domino 8と同じくLotusコラボレーション製品ポートフォリオに加えられるもので、Lotus Connectionsはビジネス向けのソーシャルネットワークサービス(SNS)エンジン、Lotus Quickerはコラボレーション型のコンテンツ共有サービスを提供する。日本語版の出荷開始予定日は、Lotus Connectionsが8月31日、Lotus Quickerが8月22日となっている。