いわゆる「インターネット実名制」などの項目を含む、「情報通信網利用促進および情報保護等に関する法律」。ここにポータルサイトの責任を規定する項目を含む改定案が、韓国政府の情報通信部によって明らかにされた。

情報通信部によると、今回ポータルサイトの責任を明確にするのは、これまでポータルサイトが法的な規制を受けることがなかったため、わいせつ物流布や不公正取引などの問題が提起されていたためだという。

わいせつコンテンツ流布の責任を追及

今回規制される項目として筆頭に挙げられているのは、ポータルサイトとP2P事業者による、不法・わいせつコンテンツの流布だ。情報通信部によると、不法・わいせつコンテンツは、その大部分が検索とP2Pから流出しているものであるにも関わらず、現行の法律ではそのコンテンツを流布させた人のみを処罰対象としているため、事業者に対する責任は曖昧な状態であったという。

これに対して改正案では、ポータルサイトに不法情報の流通を遮断する人材を組織させ、不法情報を発見次第、即刻遮断するよう義務付ける予定だ。またP2Pサイトでは、ユーザーが不法コンテンツを共有しないよう、技術的措置を義務化させる。

サービス廃止後もサービス継続でユーザーを保護

韓国には以前「Netian」というポータルサイトがあり、約750万人もの会員を獲得していた。しかし2006年にNetianを運営する同名の企業が破産を申請したのと同時に、Webサイトを予告なしに閉鎖。Webメールなどを利用していた会員たちが多大な被害を受けるという事件が発生したことがある。

こうした事態を受け、情報通信部は今回の改正案にインターネット事業者がサービスを取りやめる場合の措置についても規定している。サービス廃止時でもユーザーがWebメールなどをダウンロードできるようにし、とくに1日平均のユニークユーザー数が10万人以上のポータルサイトおよび動画共有サイトの場合は、たとえサービス自体が廃止しても30日間はサービスが稼働できるようにする予定だ。

中小の取引会社を保護

韓国で大きな力を誇るポータルサイトに対し、ポータルを相手にする中小企業を保護する政策が盛り込まれているのも改正案の特徴だ。

改正案ではポータルサイト側とコンテンツプロバイダ側で契約を結ぶ際、コンテンツプロバイダに不利な契約を結ぼうとした場合には、その内容を告知するようにし、一方的に不公平な契約を結べないようにする。

また、オンライン広告主としては小規模の個人事業主などを保護するため、オンライン広告の不正クリック禁止および、不正クリックによって膨らんだ広告費の請求を防止できるようにもする方針だ。

こうした保護策が出てくるのは、他でもないこれらの問題が水面下では存在していたことに由来している。大企業が力にものを言わせて不公平な取引をしないよう、改正案で強く規定するのだ。

このほか、ポータルサイトが検索語ランキングを故意に操作した場合には、3,000万ウォン(約388万)以下の過怠料を付加するほか、1日の平均ユニークユーザーが10万人を超えるポータルサイトの場合は、ランキング操作を防止する技術を導入するよう促す。

情報通信部によると、韓国のインターネット利用者は2006年末現在で韓国国民の約70%にあたる3,400万人程度となっており、このうちの大部分が1日1回以上3大ポータルサイト(Naver、Daum、NATE)を訪れるという。さらに約1兆2,000億ウォン(約1,550億円)相当のコンテンツがポータルサイトを通じて提供されている。またインターネット広告は、広告市場全体の12.4%を占めているという。

韓国で巨大化し、生活に密着する一方のポータルサイトは影響力が大きく、その責任を明確にする法律が出てくるというのも当然の流れかもしれない。

同改定案は8月1日に開催される公聴会で一般の人たちからの意見を集めた後、関係部署などと協議して国会に提出される予定だ。