韓国のポータルサイト「Daum」で、もっとも人気のあるサービスの1つが同好会サービスの「カフェ」だ。ここでは特定のテーマについてユーザーが集まって情報交換するだけでなく、社会問題を共に考えたり、それに対してアクションを起こしたい人たちが集う場ともなっている。そんなカフェがDaum側から一時遮断された事件がちょっとした議論を呼んだ。

2006年10月、Samsungグループ企業の下請け会社であるSamsung Korenoを解雇された人物が、Daum内に「Koreno 民主労働推進委員会」というカフェを作った。Samsungグループから低賃金で重労働を強いられ、簡単に解雇されるなどの不当な扱いを受けたことに対して、労働環境の改善を要求し、労働組合を組織したいとの意図からだ。

Samsung Korenoの労働者たちはSamsung関連の工場でフルタイムで働いていながらも、扱いは契約社員など不安定なもので待遇も低い方だという。こうした状況に対抗しようとした人物が解雇された後、Samsung Koreno側とは関係なく、独自でカフェの運営を開始。現在、会員は100人以上に達している。

カフェではSamsung Korenoの元社員たちが受けた不当な扱いや、Samsungグループ企業の社屋前で行った集会報告など、さまざまな情報が活発に交換されている。集会の様子がマスコミにも取り上げられると、カフェ自体もその名を知られるようになった。

ところが2007年6月に入り、このカフェがDaum側によって閉鎖されてしまう。理由は「カフェに自社の名誉を毀損する内容がある」とSamsung Koreno側から訴えがあったためだという。Daumではこれに対し同社の独自制度である「サイバー仮処分」措置を実施。これは同サイト内に名誉毀損などの掲示物があった場合、Daumが臨時で削除するというものだ。「これは一時的に見えなくなるだけで、データはサーバーに残っている」とDaumでは説明する。

サイバー仮処分を受けたカフェが事実上のアクセス不能になると、活発に活動を繰り広げていた時よりも大きな話題となった。論点は、名誉毀損の訴えを受けてカフェを閉鎖に追い込んだDaumの独自措置が果たして正しいのか、表現の自由を侵害しないかという点に集中する。

これに対して情報通信倫理委員会は「名誉毀損に当たりにくい」という公式見解を出しており、こうした見解を受けてDaumは7月中旬に入り、カフェを復帰させた。

7月下旬に入りカフェ上には「(Daumの措置が)結果的に会員の皆さんのカフェ利用とオンライン上の会話、表現活動に支障を与えた」として、謝罪文を掲載したポップアップが出るようにした。

韓国はデモや闘争が比較的多い方だ。これにインターネット環境の充実という要因も加わって、ブログやカフェなどを活動手段の1つとして利用する人たちも少なくない。Daumを始めとするポータルサイトはこうした状況をよく知っているはずだが、今回のような事態は時おり発生してしまうもののようだ。

また、悪質な書き込み、いわゆるアクプル問題の深刻化から法改正まで実施された今、ポータルサイト側も大変敏感になっていることから発した出来事であるともいえる。