SAPジャパンは23日、同社が進める企業ビジネスユーザを支援する取り組みに関するプレスセミナーを実施し、エンタープライズ2.0の推進を中心とする今後のロードマップなどについて説明した。
SAP AG シニアディレクター ソリュ-ションマーケティング Byron Banks氏 |
SAP AG シニアディレクター ソリュ-ションマーケティング Byron Banks(バイロン バンクス)氏は、企業における作業内容の変化を分析し、インフォメーションワークの比重が顕著に増加していると指摘。「今後はインフォメーションワーカーによりよいインフォメーションを提供できる環境を整えることが課題となる」と語った。
従来のエンタープライズ製品、例えば「SAP Business Suite」などがカバーしてきた分野は、ビジネスのコアプロセスを円滑に運用するための"タスクワーク"の部分だ。それに対して"インフォメーションワーク"とは、E-mailやモバイルアプリケーションなどによって情報へアクセスするプロセスを指す。インフォメーションワークを円滑に進めるためには、タスクワークで扱われる情報に素早く正確にアクセスできることが重要となる。SAPではWeb 2.0を取り入れた「エンタープライズ2.0」によって、インフォメーションワークを担う新しいユーザ層やプロセスをカバーしていくとのことだ。
Web 2.0はすでに一般のコンシューマには広く浸透しており、企業においてもブログやRSS、Wikiといったテクノロジーが少しずつ導入されるようになってきた。しかし企業活動においてWeb 2.0を導入する場合、コンプライアンスやセキュリティのリスクを増加させるというデメリットもあり、それをどうコントロールしていくかが大きな課題となる。したがって、単にブログやWikiを設置すればそれで完了というわけにはいかない。Banks氏は、「企業システムの一部としてWeb 2.0を統合するべきだ」と指摘する。つまり、コンプライアンスやコーポレートガバナンス、セキュリティなども同時に適用していくのが重要だということだ。
このようなシナリオは、既存のアプリケーションの上に新しいシステムを構築することで実現できるという。ビジネスに必要な情報はSAPやERPなどの基盤アプリケーションによって管理されている。これらの情報に対して、Web 2.0テクノロジーを活用したより良いアクセス環境を提供することで、既存資産の活用を促進できると同氏は言う。SAPの提供するものとしては、優れたUIコンポーネントを備えるエンタープライズウィジェットや、PDAや携帯電話などからSAP上の様々な機能へアクセスできるようにするプロジェクトデルタなどがある。
そしてこれらの中心となるのがエンタープライズSOAに基づいたサービス基盤「SAP NetWeaver 7.0」である。今後12ヵ月から24ヵ月の間にWeb 2.0テクノロジーによる様々な機能がリリースされ、それをSAP NetWeaver上でマッシュアップして利用できるようになるという。これにより、SAP NetWeaverが信頼できるビジネスの拡張をサポートするエンタープライズ2.0用プラットフォームになる。
その一例としてBanks氏が紹介したのが、今年第3四半期に出荷予定の「NetWeaver Portal Collaborative Portal」だ。同製品ではWikiやブログ、RSSなどを統合し、これによって同じトランザクション上で複数の職務の人々がコラボレーションできるようになるという。
SAP AG シニアディレクター ソリュ-ションマーケティング Balamurugan Kalia氏 |
また、今年8月出荷開始予定(英語版のみ。日本語サポートは2008年第2四半期を予定)の「SAP NetWearver Enterprise Search」ではWebサーチと同様の操作感でビジネスアプリケーション内の情報を検索できる。SAP AG シニアディレクター ソリュ-ションマーケティング Balamurugan Kalia(バラムルガン カリア)氏は、今日の情報アクセスの問題として次のような点を挙げている。
- 時間がかかる
- 量と質の両方を満足させるのが難しい
- 必要な情報の場所がわからない
- 企業システムとエンドユーザの間に壁がある
- 情報分析機能がビジネスプロセスとつながっていない
そしてこれ解決するために必要なのは、Webサーチのような使い易い検索システムだと指摘する。SAP NetWearver Enterprise Searchでは、SAPビジネスアプリケーションをはじめとしてファイルやWebサーバ、サードパーティ製のビジネスアプリケーションや検索エンジンなどを統合し、統一的に情報の検索を行うことが可能。なおかつ、それをWebブラウザやポータル、ウィジェット、モバイルデバイス、電子メールなど様々なインタフェースから利用することができる。これにより、データプロセスをインフォメーションワーカーの仕事の中にシームレスに取り込むことができるという。
Banks氏は今後、ビジネスにおける生産性や意思決定を向上させるためには組織内の集合知が重要になると指摘する。組織の中に埋もれている情報を効果的に活用できるようにすることで、知識の共有、ワークパターンの拡張、情報に対する自給自足率の向上などを実現できる。SAPのエンタープライズ2.0プラットフォームがそれをサポートする。