韓国では、ブログや掲示板の悪質な書き込みを「アクプル("悪"と"Reply"を合わせた造語)」と呼んでいる。インターネット上の掲示板やニュース記事のコメント欄などが、時おりアクプルでいっぱいになることがあり、中には特定の人の名誉を傷つける内容もあるため、社会問題化している。こうした状況に対して韓国は、本人確認ができなければ書き込みができない「インターネット実名制」を先頃実施したが、それでもアクプル問題は深刻なようだ。
サイバー暴力は単純な動機から
韓国情報通信倫理委員会(KISCOM)は「2007年 不法・青少年有害情報利用実態調査」を実施した。この調査は、全国の満13歳以上のインターネット利用者である男女1,000人を対象に、個別の面接形式で行われた。
調査によると、インターネット上でアクプル攻撃をされたり、個人情報を流出されたりといった「サイバー暴力」を受けたことのある人は、2006年の15.4%とほぼ同じ水準の15.2%であることがわかった。
このうち、攻撃を受けた場所としては「インターネットニュースコメント」が53.9%で最多。2006年の調査との比較で、増加率がもっとも多かったのは「ミニホームページ、ブログ」で14.7%増加した。逆に「チャット、メッセンジャー」は9.5%、「ゲーム」は3.9%減少していることがわかった。
メッセンジャーは内輪のコミュニケーションが多いためか、サイバー暴力も減少傾向にある一方、インターネットニュースやブログなど、多くの人が集まる公の場においてサイバー暴力が多い傾向にあるようだ。ただ、人が集まるからサイバー暴力行為にもブレーキがきくということではなく、匿名性からきている傾向なのかもしれない。
サイバー暴力の加害者は誰なのか、という質問については、大部分の人が「匿名なのでわからない、もしくは、まったく知らない人」と答えている。それでは逆にサイバー暴力を加えている側から見て、こうした行為を働く理由というのは何なのだろうか。
サイバー暴力を行う理由としてもっとも多かったのは、「単純な好奇心やいたずら心」(48.5%)。次いで「単に自分が嫌いな人なので」(32.9%)、「他の人から注目を浴びたいから」(25.2%)となっている。
サイバー暴力で心に大きな傷を受ける人もいるわけだが、一方でこうした行為をはたらく理由は意外と単純で簡単だった。サイバー暴力を受ける側との温度差が大きいことが分かる結果だ。
不法情報・青少年有害情報への接触度は
一方、不法に流出している音楽・動画などのファイルや、わいせつ画像・動画など、不法情報・青少年有害情報への接触経験に関しては、2006年の39.6%とほぼ同じ水準の39.7%となった。
接触する経路となっているのは「インターネット検索」(55.1%)がもっとも多いものの、増加率でいえば「P2P、ウェブストレージ」(20.1%)が8.4%も増加している。著作権侵害情報に対する取り締まりが厳しくなっている韓国だが、いくら取り締まっても新たなWebサイトが登場するなどして、いたちごっこのような状況が続いている。
不法情報・青少年有害情報の接触経路については年代的な特徴もあり、インターネット検索はおもに40代以上の人がよく利用している。また、10~30代はP2Pやウェブストレージをより多く利用する傾向が強い。不法情報・青少年有害情報がどこから流出しているかを、知っている者と知らない者の差と言えるかもしれない。
サイバー暴力や有害情報などは、韓国のインターネットにおける大きな問題となっている。とくに大きな問題となっているサイバー暴力が、いたずら心や好奇心など単純な理由で行われていることは、KISCOMでも意外だとしている。こうした行為に対して、韓国政府は、インターネット実名制などの対応策も出しているが、これが本格的に開始されたのは6月末のこと。効果を見るにはもう少し時間が必要かもしれない。