11日(協定世界時)、The FreeBSD Projectから2007年第2四半期(4月~6月)状況報告が公開された。これまでの状況報告などから次期メジャーリリースとなるFreeBSD 7.0-RELEASEについて見通しをまとめておく。サーバの導入や入れ替え、開発での採用を検討している場合は特に注目しておきたい。

リリーススケジュール

7.0-RELEASEに関するスケジュールはまだリリースされていない。これまでのリリーススケジュールや、現在掲げられている7.0-RELEASEへのマージ機能を加味すると、現実的なリリース日程は2007年10月以降になると言えそうだ。少なくとも2007年年内には7.0-RELEASEが公開されるとみられる。

また2007Q2状況報告にもあるとおり、現在の安定版である6系の最新版6.3-RELEASEも7.0-RELEASEのリリース作業と平行して進められることになる。このため2007年の秋から冬にかけてFreeBSDメジャーリリースということになりそうだ。

マルチコア/プロセッサにおけるパフォーマンスの大幅な改善

FreeBSD 7系の最大の注目点はマルチコア/プロセッサにおけるパフォーマンスの大幅な改善ということになるだろう。FreeBSD 6系ですでに5系と比較してパフォーマンス改善が実現されたわけだが、7系はさらにパフォーマンスが向上している。Giantロックの削除、MPSAFEへの移行、細粒度スレッドロックへの移行、カーネルコンテンションの削減、適切なロック実装への変更、こうした着実な改善が実を結んでいる。

実装面ではULE 3になるとみられているSCHED_SMPスケジューラの登場が注目される。まだ7-CURRNETにはマージされていないが、CPUアフィニティの向上やSMPに適切な改善などが加えられたスケジューラで、多くの負荷状況で優れた性能を発揮すると主張されている。FreeBSDのデフォルトスケジューラは安定性の面もあり、依然としてSCHED_4BSDが採用されているが、デフォルトスケジューラとしてULEスケジューラが採用される時期が近づいているかもしれない。

仮想化機能の強化

マージ時期はわからないがネットワークスタックの仮想化がメインストリームにマージされるだろう。同機能がマージされるとjail(8)を使っている場合に複数のネットワークを同居させることができるなど、ネットワークテストベッドとしてもインフラストラクチャとしても興味深いことが実現できる。7.0-RELEASE以降においてFreeBSDの特徴的な機能になるだろう。

またFreeBSD/xenの開発作業が順調に進んでいることも評価できる。マルチコア/プロセッサシステムの普及に伴ってXenの活用は重要なファクターになってくる。またLinux KVMの移植も評価できる。最終的にはQEMUなどの性能が向上することになるだろう。

ネットワーク機能の強化

802.11ワイヤレスサポートの強化、802.11nデバイスサポートの追加、10Gビットネットワークドライバの開発、Magic Tunnel Daemon/Multi-link PPP daemon/multicast DNS daemonといった各種デーモンの開発、KAME IPsecからFAST_IPSECへ変更、Wake On Lan対応、PXEサポートなどネットワーク機能の強化が実現されている。マルチコア/プロセッサシステムにおいて性能をリニアに向上させるための改善も随時進められており、今後の発展が楽しみなところだ。

USBスタックの改善、GEOM/HALとの連携

USBスタックの改善や対応デバイスの追加、Linux USBデバイスの対応など、USB関連の改善は目を見張るものがある。種々の理由からマージされていないが新しいUSBスタックも興味深い。

HALの実現やGEOMの活用もあり、USBデバイスなどの周辺機器はかなり扱いやすい状況になっている。たとえばiPodを接続した場合、従来どおり/dev/da0系デバイスが生成されるほかiPod用のラベルでのデバイスの生成、さらにユーザが操作できるパーミッションでの自動マウントなどが実施される。デスクトップユースで利便性が向上している。

デスクトップユースへの対応

USBデバイス対応の追加や各種周辺機器への対応、PC-BSD 1.4のリリースやfreebsd-update(8) Gnomeフロントエンドの導入、Linuxバイナリ互換機能アップグレード、次世代FreeBSDインストーラの導入、X.Org 7.2の導入、Berylの導入、NVIDIAドライバの導入、最新のGnome/KDEの移植など、デスクトップユースで扱うとしても便利な状況がそろっている。

リリーススケジュール的に7.0-RELEASEには間に合わないかもしれないが、Gnome 2.20.0の導入やKDE 4の導入も行われるだろう。リリースが年末へずれ込む場合は、これら最新の2大統合デスクトップ環境がパッケージとして用意できる可能性もある。もちろんPorts Collectionでアップグレードできるが、リリースで用意できると導入が簡単になる。

総括 - 7.0-RELEASEはローエンドからハイエンドまで期待あり

6.0-RELEASEは徹底した安定性検証の後でリリースされたため、最初の安定版リリースであるにもかかわらず、すべてのユーザにアップグレードが推奨できるブランチとなった。7系は6系と比較して多くの新機能追加、改善が施されたリリースで最終的な安定性がどの程度のものになるからまだわからないが、現状を見る限りでは結構期待できる品質に仕上がるのではないかと思える。

特にマルチコア/プロセッサシステムにおける性能改善に目覚ましい成果があがっていることから、マルチコア/プロセッサシステムにおける性能をフルに発揮するためのインフラストラクチャとしても魅力的な成果物に仕上がりそうだ。パフォーマンスの向上や仮想化などに興味がある場合、7.0-RELEASEは検討すべきリリースになるだろう。