マイクロソフトとSAPジャパンは、「Microsoft Office」をインタフェースとして用い、SAPのERPアプリケーションにアクセスできるようにするための、企業ユーザー向けフロントエンドソリューション「Duet for Microsoft Office and SAP1.0」(以下Duet)を発売すると発表した。「Microsoft Office 2003 Professional Enterprise Edition SP2」に対応しており、2007年末には「the 2007 Microsoft Office system」に対応した「Duet 1.5」を投入する予定だ。Duetは両社が共同で設計/開発しており、販売/サポートでも協業する意向だ。
Duetは、エンタープライズサービス指向アーキテクチャー(エンタープライズSOA)を基盤としている。「エンタープライズSOA」は、アプリケーションのサービス部品群を、SAPのビジネスプロセス統合プラットフォーム「SAP NetWeaver」で共通化し、その上のフロントエンドを介して、さまざまな属性のユーザーがサービスを利用できるしくみだ。サーバとしては、「mySAP ERP 2004」以上、「Microsoft Exchange Server 2003」に対応する。ユーザーは、 Duetの拡張アプリケーションメニュー、SAP独自のスマートパネル、Excelのビジネス分析、OutlookによるExchange ServerとSAPのプロセスの同期などの機能を利用しながら、SAPアプリケーションに設定、あるいは管理されている多様な情報を利用して、さまざま作業ができる。
日常的な業務としてはOutlookの予定表からの休暇申請、SAPアプリケーションへのリアルタイムの作業時間レポート、出張管理などが可能になる。また、予算管理では、SAPアプリケーションから Outlookの受信トレイにレポートが届き、オフラインで作業することができる。組織管理では、SAPアプリケーションで管理されている従業員情報、組織構造などの最新情報へのアクセス、マネージャの労務管理/承認などの業務機能がOutlookを利用して行える。さらに、需要計画では、Excelを通じて、需要計画のデータにアクセスし、オフラインで計画を分析し、Excelで修正した情報を計画モジュールにアップロードすることが可能だ。
マイクロソフトの平井康文 執行役専務は「今回のスキ-ムは、Office製品で、バックエンドとフロントエンドをつなげること。ビジネスの現場で使い慣れたOfficeと、SAPアプリケーションの連携は、新たな価値を生み出す」と話す。SAPジャパンの安田誠シニアバイスプレジデント パートナー&マーケティング統括本部長は「企業内では、Officeが非常に良く使われているが、SAPのERPは年がら年中見るわけではない。(双方を)切り換えて使っていたわけだが、この両者の連携でさまざまなメリットが生まれる。タイムリーに情報を活用でき、データの二重登録回避などが可能になる。DuetはSOAのひとつの具現化だ」と述べている。
販売チャネルは、マイクロソフトの代理店、SAPのパートナー/直販などとなる予定で、両社共同のサポートデスクが設置される。また、NEC、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、富士通、アクセンチュアなど11社が、Duetのコンサルティング、導入、販売の支援パートナーとして協力する。販売目標は「年末までに、大手企業10数社-20社、2008年には、100-200社からの採用」(安田氏)を目指す。
Duet 1.0は英語版が2006年6月に発売され、すでに全世界で250社が採用、40万ユーザーのライセンスを販売しているという。2007年3月に日本語、仏語、独語などに対応するとともに、需要計画、出張管理などの機能を追加した。年末に発売される見通しである「Duet1.5」では、「2007 Office system」に対応、購買管理、採用管理、契約管理の各機能も追加するほか、主要な言語すべてをサポートする。2008年第4四半期には、「同2.0」が登場する見込みで、さらには、次世代のOfficeの準拠する「同3.0」までが両社の視野に入っている。
ERPといえば、従来、SAPが世界市場で優位に立ってきたが、いまでは、マイクロソフトも参入、同社は先日、国内でも「Microsoft Dynamics AX 4.0」を発売したばかりだ。両社のERPは競合するのでは、との問いに対しマイクロソフトの平井氏は「Dynamics AXは中堅/中小企業が主要な市場であり、Duetのターゲットのセグメントとは若干異なる。実際の衝突は起こらない」と語った。Duetは両社が初めて共同開発した製品だ。平井氏は「マイクロソフトとSAPの協業は1 + 1 = 3か5、もしかすると10くらいになる大きな内容をもっている。両社は視点は違うが、共生していける。(今回の連携は)新しいコンピューティング環境をもたらす」と指摘、この協業の意義を強調した。