米Oracleは7月11日(現地時間)、同社データベース製品の最新バージョン「Oracle Database 11g」を発表した。DBMSのメジャーバージョンアップは、2003年のOracleWorldでの10gのデビュー以来約4年ぶりとなる。前バージョンからの強化点は多岐にわたり、信頼性やセキュリティ、管理機能の全体的な強化が特徴として挙げられる。

Oracle 11gでは、10g発表時のデータベース・グリッドのような象徴的なトピックはないが、システム管理者や企業のビジネスを助ける400を超える機能強化が行われている。下記にOracleが特にアピールする代表的な機能を一部紹介する。

Real Application Testing

データベースやOSのアップグレード時におけるテストの自動化を行い、最小限のリスクと時間で移行するための環境を提供する。

Oracle Data Guard

システムのフェイルオーバーやディザスタ・リカバリ機能の強化版。スタンバイサーバからの復帰や移行におけるパフォーマンス向上が図られている。

データ圧縮

新しいデータ・パーティショニングや圧縮機能の採用により、ILM(Information Lifecycle Management)やストレージ管理におけるパフォーマンス、アーカイブ時のストレージ稼働率が向上している。Oracleによれば、アーカイブでの圧縮率は従来比2~3倍に達するという。

Total Recall

データのすべての差分を記録し、特定のタイミングにおけるデータ状態への完全な復帰を実現する。これはバックアップ的な意味合いのほか、システム監査におけるデータの経過を追跡するために活用することが可能。

可用性の向上

エラー時にトランザクションの復帰を行う「Oracle Flashback Transaction」、バックアップ/リストアにおけるパフォーマンスを向上させる「Parallel Backup and Restore」、データベースのシャットダウンなしにパッチの適用が可能な「Hot Patching」などの新機能導入や機能強化が行われている。またダウン時に問題解決を自動的に行い、ダウンタイムを押さえ込む「Data Recovery Advisor」も提供される。

Oracle Fast Files

LOB(Large Objects)やXML、イメージファイル、3Dモデルなど、定形外のサイズや形式を持つデータの扱いが容易になり、従来よりパフォーマンス向上が図られている。またXML DB強化でXMLの扱いも容易になっており、バイナリXMLなど複数種類のXML保存形式をサポートするほか、XQuery、JSR-170、SQL/XMLなど各種XML標準もサポートする。

Oracle Transparent Data Encryption

従来のカラムベースから、テーブル全体やインデックスを含むDB内各種データの暗号化をサポートする。暗号化はLOBに対しても有効。

このほか、OLAP機能強化によるデータウェアハウスとしての利便性向上や、Query Result Cacheのデータ参照結果再利用によるパフォーマンス向上、自動管理による管理コスト削減の実現など、細かい点で新機能追加や既存機能のリニューアルが図られていることがわかる。

Oracleは11gの発表にあわせて米ニューヨーク市内でローンチイベントを開催し、米OracleプレジデントのCharles Phillips氏らが製品のバックグラウンドや詳細を説明した。Phillips氏は「多数のリソースと30年にわたる経験を詰め込んだOracleの集大成」と11gをアピール。同氏の言葉にあるように、今年はOracleにとって設立30周年となる記念すべき年である。同社CEOのLarry Ellison氏は1977年6月、2人の仲間とともにOracleの前身となるSoftware Development Laboratoriesをスタートさせた。翌1978年にはOracle DBのバージョン1を開発しており、さらに翌年には商用では初となるRDBMSのOracle 2が発表される。Phillips氏の講演のスクリーンにはOracle誕生1周年を祝う4人のメンバーの写真が映し出され、11g登場までのOracle 30年の軌跡が紹介された。なお、この写真ならびに同社の歴史については、Oracleのサイト上にPDF形式で資料が掲載されている。