NECは10日、2007年度の経営方針に関する説明会を開催した。
説明を行った同社社長の矢野薫氏は、まず1年間を振り返り、双子の赤字や会計問題のため「大変不本意な年」だったとした。矢野氏の社長就任1年目だった昨年度は「飛躍のための基礎固めの年」と位置づけていたが、結果としてその目論見はまったく果たせなかったことから、2007年度は昨年度の轍を踏まず、「今年こそ」の決意で取り組むとした。
また、同氏は「イノベーションは境界領域から生まれる」との考えを強調した。NECでは「IT/NWソリューション」「モバイル/パーソナルソリューション」「エレクトロンデバイス(半導体)」を3本柱としているが、この「相互に関連しつつも若干異なる3つの事業領域の境界からイノベーションが生まれる」とし、今後もこの3本柱を堅持していくことを明らかにした。また、イノベーションを生み出す「メルティングポット」である研究所での研究開発費(R&D)は「いくら苦しくても減らさない覚悟」だという。
昨年度の業績は、営業利益の期初予想が1,100億円だったのに対し、実績は700億に留まった。この要因として大きかったのは、「IT/NWソリューション」が予想より260億マイナスに、「半導体デバイス」が310億マイナスになったことだ。一方、「モバイル/パーソナルソリューション」では下期に回復があり、予想を65億上回ったという。
モバイル事業の中核となる携帯電話端末に関しては、同氏が期初に社内向けに示した方針は、「海外事業は一刻も早く撤退する」「デザインがダサい。美しい携帯にしよう」「ヒューマンインタフェースを改善し、使いやすい携帯に」の3点だったという。海外撤退の費用もあって上期は大赤字だったというが、下期は新規投入した端末が市場で評判となり、好調だったという。改善の成果が早くも表われた形で、今年はさらによくなっていくことが期待できるという。なお、同社の事業はインフラ部分にかかわるものが多く、一般消費者に直接アピールしてブランドイメージ確立に寄与する事業は携帯電話とPCに限られるため、ブランド維持のためにも「この2つの事業は絶対にやめない」とのことだ。
このほか、NW事業ではNGNなど今後の成長要素が見えており、3本柱すべてで利益を回復し、昨期の方針だった「飛躍のための基礎固め」を今期こそ実現していくのが大目標になるという。数値目標として掲げられたのが「営業利益1,300億円」だ。
なお、同氏は「NECの本質的な問題点は何か」との質問に対し、「粘っこくとことんやり抜く姿勢が足りない」ことだと回答した。「甘い計画を立ててしまい、かつ実行時にもしつこさが足りないため、計画倒れに終わってしまう」のだという。そして、この体質を改め、「経営数値として結果が出るまでやり抜く」との決意を明らかにした。