Java Community ProcessのJSR 315 Expert Groupは6 月19日から7月2日(米国時間)にかけて「JSR 315: Java Servlet 3.0 Specification」のJSR Review Ballotを実施した。同規約はJava Servletsの次期仕様にあたるものでJava EE 6とともにリリースされる見通しになっている。

JSR Review Ballotの結果は16票中、賛成票11、棄権票1、無投票4。賛成多数にてJSR Review Ballotを通過した。しかし、ここではあえてApache Software Foundation(以下、ASF)が投票を棄権していることと、それに関係するコメントがRed Hat MiddlewareおよびIntelから寄せられている点に注目しておきたい。ASFでは、Apache Tomcatなどの代表的なServlet/JSPコンテナを開発しているわけだが、そうしたプロジェクトであるだけになぜJava Servlet 3.0 Specificationに対して棄権票をとったのか、その理由が気になるところだ。

ASFは棄権票を選んだ理由としてJCPに対する不安を挙げている。ASFでは、Java SE互換プラットフォームの開発プロジェクト「Apache Harmony」を立ち上げているわけだが、同プロジェクトに対してSun MicrosystemsがJava SE TCKをJSPA(Java Specification Participation Agreement)互換の条件下で提供しないのではないかという不安があるという。Javaとして成果物を公開するには互換試験キットによるチェックが欠かせないため、Java SE TCKを使えるかどうかはApache Harmonyにとって重要な意味を持っている。

ASFではこの件に関してオープンレターを送っているが、Sun Microsystemsからの返事はないとしている。このため、ASFは今のところJCPおよび将来のすべてのJSRに対するポリシーを策定している段階にあるとしており、まだそのポリシーが固まっていないことから本投票に対しては棄権という立場をとったようだ。どちらかといえば政治的な問題であり、技術的な問題から棄権票を選択したわけではないとされている。

Red Hat MiddlewareやIntelは賛成票をあげつつも、ASFによって提起されたJava SE TCK使用に関する問題に言及し、本JSRに関しては"field of use restrictions"が存在しないと明言されたため賛成するが、JCPのオペレーションに関して何らかの改善なり対策なりが必要ではないかという意見を述べている。