日本IBMとアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス(以下IBCS)が今年5月から提供を開始した「IBMグリーン・コンサルテーション」。1971年から環境問題に取り組んできたIBMの長年にわたる経験と蓄積を生かし、「法律や規制に対応する」といった従来の"ディフェンス型"の環境経営・CSRから、「企業のブランド価値をより高める」という"オフェンス型"への転換を支援するサービスとなっている。年内に10社以上の導入を目指しているというIBMグリーン・コンサルテーションについて聞いてみた。
経験とノウハウの蓄積が強み
IBMの環境問題への取り組みの歴史は古い。オイルショックが起こる前の1971年、同社CEOのThomas Watson Jr.氏が最初の環境ポリシーを策定。以後も同社は「公害防止」「天然資源保護」「エネルギー管理」などのポリシーを定め、1990年には「地球環境問題対応情報開示」をテーマとした環境ポリシー「#139」を策定した。さらに1997年、環境ポリシー「#139B」を策定。これらに沿ったかたちで、1990年~2005年の15年間で、全世界でのCO2排出量を1990年のCO2総排出の40%を削減。日本IBMも同じ15年間で1990年のCO2総排出の58%を削減した。
IBMはさらに、2005年のCO2排出量を基準として、2012年までに温暖化ガス排出量を絶対量でさらに7%削減、また、当該年度のIBMの年間使用エネルギー(電気と燃料)の3.5%に相当する省エネを毎年達成するとの目標を掲げている。
「IBMグリーン・コンサルテーション」の一番の強みは、全世界で実際に環境問題に取り組んできた、こうしたIBMの経験と蓄積、ノウハウに基づく点にある。
コンサルテーションの中身は、「環境経営」と「CSR」の2本立てになっており、それぞれの入り口として「E-0」、「C-0」と呼ばれるクイックアセスメントがある。最短2週間というこの「クイックアセスメント」により、まず顧客企業の問題点を洗い出し、それから環境プロセス導入支援やCSR戦略策定へと進む仕組みとなっている。
クイックアセスメントでコスト分析から開始
では、全ての発端となる「クイックアセスメント」とはどのようなものなのか? IBCS戦略コンサルティングサービス アソシエイトパートナーの駒形佳幸氏によると、「『環境経営やCSRを実現したいがどこから手をつけていいか分からない』というお客さんの立場に立って、コスト分析から始めている」と説明する。
環境経営のクイックアセスメントの場合、環境に関する数々の規制に対応するために顧客企業が一体どれだけお金をかけているのかを抽出・可視化。その上で、投資の必要がないのにコストをかけているところや、逆に、投資すべきところに投資できていない部分など、テンプレートに基づいて課題仮説一覧を作成する。さらに、環境ITシステムテンプレートを用い、ディフェンスプランとオフェンスプランを含むアクションプランを策定し、アセスメントが終了するという。
クイックアセスメントの価格は300万円から。さきほど述べたように、クイックアセスメントはグリーン・コンサルテーションの入り口となる部分で、それからシステム構築などへと進んでいく仕組みだが、クイックアセスメントだけで終わることも可能だという。だが、グリーン・コンサルテーションでは、アセスメント後こそ、IBMのノウハウと蓄積がより生かされるという。
ブランドイメージ高める"攻め"の取り組み提案
「クイックアセスメントはあくまで青写真で、コスト削減や業務改革などクイックアセスメントで提示したアクションプランを、IBMが培ってきた環境ITシステム構築のノウハウなどを用いて実際に構築。環境経営の場合はE-1『環境プロセス導入支援』、E-2『環境IT・システム構築支援』、CSRの場合はC-1『CSR戦略策定』、C-2『CSRプロセス改革』、C-3『CSR PMO』というプロセスにおいて、IBMの長年にわたる環境・CSRへの取り組みがより生かされる仕組みとなっている」(駒形氏)という。
グリーン・コンサルテーションが終了するまでの期間は、3カ月から数年とまちまちだという。コンサルテーションのためIBCSに設けられた専門チームにはIBMとIBCSから約60人が集結。IBMのノウハウを生かすため顧客企業は主に製造業を想定しているが、それだけにとどめるつもりはないという。
IBCS戦略コンサルティングサービス コンサルタントの三村経親氏は「食品会社が使用している水の質を高めたりするなど、企業のブランド価値を高める環境経営・CSRを積極的に提案していきたい。単なる『リスク回避』ではない、オフェンス型の環境経営・CSRを訴求ポイントにしたい」と話す。
"守り"の環境経営・CSRから、"攻め"への転換へ。グリーン・コンサルテーションの今後に注目したい。