トレンドマイクロは3日、企業向けの新アプライアンス製品群を発表した。マルウェアの導入口としてのメールは依然脅威ではあるが、Web経由の攻撃が増加傾向にあることから、これに対抗する製品を市場に投入する。あわせて、「Webからの脅威」に対抗するための新戦略「Total Web Threat Protection」を推し進め、パターンファイルベースの保護からの脱却を図り、企業に多層的な保護を提供していきたい考えだ。

同社は1998年、当時は未開拓だったメールゲートウェイ用のセキュリティ対策市場を掘り起こし、ゲートウェイ市場において2000年に80億円、2006年に193億円の売上高を上げた。今後6年間でゲートウェイ製品の売上げを2倍以上にすることを目指す。

今回発表された製品は大企業向けのWebセキュリティアプライアンス「InterScan Web Security Appliance 3.1」(IWSA)、同メールセキュリティアプライアンス「InterScan Messaging Security Appliance 7.0」(IMSA)、中堅企業向けSCMアプライアンス「InterScan Gateway Security Appliance 1.5」(IGSA)の3製品。

Webからの脅威に対抗するIWSA

新製品「InterScan Web Security Appliance 3.1」(IWSA)は、不正なHTTP通信をブロックするWebレピュテーション機能を搭載する。この機能はアクセスするWebサイトの情報を、「Web Reputation Service」(ドメインのレピュテーションの問い合わせ)と、「Rating Service」(インターネット上の最新のURLデータベースへの問い合わせ)と照合、危険度を判断し、アクセスをコントロールする機能。Webレピュテーション、つまりWebサイトの格付け機能といえる。

InterScan Web Security Appliance 3.1

同社 代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、「Webからの脅威は現実のもの」と警鐘を鳴らす。「今朝(3日)、私たちの(マーケティング)チームが調査した数字によると、HTTPのトラフィックはSMTPの66倍だという。単純に言うと、ハッカーにとっては、メールを使うよりもHTTPを使った方が、66倍も大きい仕事ができてしまうということになる」と続ける。

同社 上席執行役員で日本代表の大三川彰彦氏は、「従来のように、このURLが危ないといっても、犯罪者は瞬間的に場所を変える」と語る。

こうした技術・サービスが必要になる背景には、先に述べた「Webからの脅威」がある。この脅威の特徴は大量の亜種とシーケンシャル攻撃で、亜種の増加は従来のパターンファイルベースの保護を困難にし、シーケンシャル攻撃では80番ポート(HTTP)を通じて不正なプログラムを次々とダウンロードし、感染の拡大を招いてしまう。つまりWebレピュテーション機能は、不正プログラムの導入口となっているサイトへのアクセスそのものをブロックすることで、パターンファイルに頼った保護からの脱却と、シーケンシャル攻撃による感染の拡大を未然に防ぐというわけだ。

トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEO エバ・チェン氏

トレンドマイクロ 上席執行役員 日本代表 大三川彰彦氏

IWSAは、基本的な不正プログラム対策とWebレピュテーション機能を提供するStandard版と、URLフィルタリング機能が摂津になったAdvanced版の2モデルが用意される。価格は現時点で未定だが、大三川氏が予定価格として示したのは、Standard版が1,000ユーザで180万円、Advanced版が1,000ユーザで330万円。IWSAは同社のダメージクリーンナップサービスを組み合わせることもできる。10月1日の発売予定。

4階層でスパムメールを遮断するIMSA

大企業向けのメールセキュリティアプライアンス「InterScan Messaging Security Appliance」(IMSA)は、ウイルス対策、スパイウェア対策を提供。Advanced版ではスパムメール対策にも対応する。なお、スパムメール対策では、マルウェアの難読化に対抗するための技術「IntelliTrap」を搭載。亜種の大量発生は、圧縮形式を変えることでウイルス対策ソフトの検知を逃れようとする難読化が背景にあるが、これに対応したかたちだ。

スパムメール対策としては、Emailレピュテーション機能のほか、スパムメールやマルウェアのみを送信し、正当なメールを送信しないIPアドレスに対する保護機能をもつファイアウォールを形成するIP Profilerも提供される。そのほかコンテンツフィルタリングとヒューリスティックフィルタリングにも対応し、4階層でスパムメールを対策することができる。

InterScan Messaging Security Appliance

IMSAもStandard版とAdvanced版の2モデルが用意されている。IWSAと同様、価格は未定で、予定価格はStandard版が1,000ユーザで370万円、Advanced版が1,000ユーザで470万円。9月5日の発売予定。

中堅企業に統合セキュリティを提供するIGSA

SCMアプライアンス「InterScan Gateway Security Appliance 1.5」(IGSA)は、従来製品をアップグレード、Ver1.5となった。メール経由/Web経由の脅威に対抗する製品で、中堅企業に総合的なセキュリティ対策を提供する。

Ver1.5では、従来から提供されていたEmailレピュテーション機能に加え、新たにWebレピュテーション機能を搭載する。

InterScan Gateway Security Appliance 1.5

こちらも予定価格は100ユーザで89万7,000円。9月10日の発売予定。

レピュテーション機能をマルチレイヤで実装する新戦略

会見で大三川氏は、パートナーとの関係を繰り返し強調。日本における製品・サービスのロードマップを紹介する際にも、「(事業展開の)根底にはパートナーとの協業を必ず継続していくんだという意志」(同)があると語る。

トレンドマイクロは近年、企業向け事業においてはSMB領域に注力しており、パートナーとの協業でもこれに重きを置いてきた。具体的には米Cisco Systemsとグローバルアライアンスを締結、「Cisco ASA5510 Anti-X Edition」をトレンドマイクロの販売チャネルを通じて、中小企業向けに提供している。そのほか、大塚商会との協業によるセキュリティサービス、ソフトバンク・テクノロジーとの検疫ネットワークサービス、NECのパートナー制度「InfoCageWORKS」での協業による検疫システムなどがあり、これらはいずれも中小向けのサービスとなっている。

また、同社は今回、Webからの脅威に対して多層的な防御を提供する新戦略「Total Web Threat Protection」を発表している。様々なレイヤにレピュテーション機能を提供し、それらを「Trend Micro Control Manager」で一元管理するサービスモデルで、同社の情報収集力と既存製品との組み合わせが競合他社には無い強みだという。

新戦略「Total Web Threat Protection」

新戦略を構成する要素

レピュテーション機能をマルチレイヤで実装

新戦略の有効性

今後はパートナー戦略と「Total Web Threat Protection」を推進していきたい考えで、2007年第4四半期には「Trend Micro Control Managerで状態管理を把握し、レポートを生成、(トレンドマイクロの)エキスパートがアドバイスする」(大三川氏)というサービスも構想。同じく第4四半期には監視サービスの提供も予定している。こうした取り組みにおいても、パートナーとサービスを共同提供することも視野にいれ、事業を展開していく構えだ。大三川氏は「(パートナーがサービスに)乗り入れる可能性を踏まえて、サービスを提供していきたい」と語っている。

日本における製品・サービスのロードマップ

企業向け製品・サービス戦略