日本最大規模の国語辞典「日本国語大辞典」のオンライン版「日国オンライン」サービスが2日から開始された。ネットアドバンスが提供する「JK(ジャパンナレッジ)プロジェクト」内のサービスとして提供され、同辞典の全コンテンツをWeb上で検索、閲覧できる。利用は個人契約が月額1,575円、法人契約が月額15,750円。

全13巻の日本国語大辞典

今回開始された大辞典のオンライン版「日国オンライン」

全13巻、全50万項目・100万用例を有する日本国語大辞典は、「ボリュームは日本一」(小学館)の規模で、現在第2版が販売されている。歴史的には大正時代の「大日本国語辞典」を原点としており、100年以上の歴史を誇る。小学館では、オックスフォード英語辞典を意識し、「日本の顔となる辞典」(同)を目指している。

AND検索などの詳細検索、見出し、本文、用例などからの検索が可能

検索の例。後方一致検索をしたことで逆引き的に使える

最大の特徴は、実際に文献で利用されている用例を丹念に集めたことで、さらに各用例には出典とその年代が記載されているので、その用語がだいたいどの年代には実際に使われていたかが分かる。基本的には初出に近い文献から用例を集めているそうだ。

検索例。一般的には「初孫」は「ういまご」と読むとされ、1632年の文献にはすでに見られる

最近は「はつまご」と読まれる例も多く、実は1891年にはもう使われていて、こちらも十分古くから使われている読み方であることが分かる

オンライン版の特徴を生かして漢字で検索すると、さらに「はつうまご」という読み方があることも分かる

「はつうまご」は1081年ごろには登場しており、もっとも古い読み方であることが判明

図版5,000点を含む大辞典すべてをWebサービスとして公開する日国オンラインは、ネットアドバンスの会員制知識探索サイト「Japan Knowledge」内のコンテンツとして提供する。

見出し、全文検索に加えて用例、方言などから、AND/OR/NOT検索を組み合わせて多彩な検索方法に対応。後方一致検索を使うことで逆引き辞典としても利用できるほか、漢字での検索が可能なので、読みの分からない単語も容易に検索できる。

これも検索例。用例の年代を見ると「東京」が「とうけい」と読まれていたのは明治初期から中期ごろが多いようだ

今のように「とうきょう(とうきゃう)」と読むようになったのは明治後期らしい、ということが分かる

関連項目や親子項目の参照ジャンプ機能を備え、リンクをたどって容易に別項目へ飛べるほか、収録された方言には出典番号と出典情報がリンクされ、典拠となる資料に簡単にアクセスできるなど、電子媒体としてのメリットを備えたことで、より使いやすい辞典を目指した。

これは用例から、松尾芭蕉の俳句で、春の季語が使われた句を検索したところ。こうした検索ができるのも電子媒体ならでは

今後は内容を充実させるが、基本的には書籍の版に準じて更新を行う。現在、「2.5版」と呼ぶ大規模の更新が予定されており、それに合わせてオンライン版の内容も更新するという。それ以外では、誤植、事実の誤りなど、増刷の際に直すような内容の更新はするが、当面は書籍版と内容を一致させていく方針だ。

一般的に若者言葉だと思われる「びびる」という言葉は、1680年にはすでに文献に登場している古い言葉

「かまぎっちょ」を検索したところ。方言で「カマキリ」「トカゲ」を表す言葉だが、どの地方で使われているか一目で分かる。日本語をより深く味わえるのが日国オンラインだと小学館

ただし、今後オンライン版で独自の更新をしていくことも検討されている。これまで無料のサイトとして「日国.net」が提供されており、大辞典内に出てこない用例やより古い文献に登場する用例を読者から集め、ある程度精査した状態で公開してきた。これを連携させることも想定しているそうだ。

日国オンラインは、これまでベータテストとして500近い研究者、教育機関などが利用してきたが、7月2日からの有料化に伴って打診したところ、多くの利用者が引き続き利用することを望んだという。

ネットアドバンスでは国語国文関係で定評のある日本国語大辞典のオンライン化で、JapanKnowledgeの会員も増えるとみている。なお、日本国語大辞典はこれまで電子媒体として提供されてはこなかったので、この日国オンラインが初めての電子媒体での提供となる。