4月にオンライン広告配信の米DoubleClickの買収を発表したGoobleが、その理由を明らかにした。GoobleのプロダクトマネージャーであるAlex Kinnier氏が26日、同社の公式ブログで語った


今回の買収の背景には、昨今のオンライン広告市場のトレンド変化がある。オンライン広告市場では、シンプルなバナー広告から検索連動型のテキスト広告配信へとシフトし、現在、全体の4割をこうしたテキスト型広告が占めている。Goobleをはじめ、Yahoo!、MSNといったポータルサイトは、検索連動型テキスト広告の分野で優位な立場にあるが、同様にオンライン広告の4割を占めるディスプレー広告では、年間1億ドル以上の収入を稼ぎ出しているAOLやYahoo!、MSNに対して、Goobleは一歩出遅れている。

一方、DoubleClickやAtlas、MediaPlexのような広告配信サービス企業は、広告主がコンテンツサイトに広告枠を得るための仲介をし、その広告の効果の測定までを行う。Googleが今回DoubleClickを買収したのは、Googleの検索技術とコンテンツ連動型広告の可能性を高め、他に出遅れているディスプレー広告市場への進出を強化したいという狙いがある。

DoubleClickの広告配信メカニズムとGoogleのAdSenseネットワークの連携により、広告主がキャンペーン効果を判断する上で必要な、より明確な測定基準を得られるようになる。さらに、媒体主が販売できないでいる広告在庫をできるだけ換金するとともに、さらにリッチで多様なオンライン広告の新サービスの出現も期待できる。

通常、オンライン広告サービスは、広告をウェブサイトに提供し、それを配信する行為で成り立っている。GoogleとDoubleClickの関係は、Googleが主に広告を販売し、DoubleClickが広告を配信するという、別々の役割を担いながらも補完的に機能し合うかたちだ。わかりやすく喩えるならば、消費者に本を販売することで利益を得るAmazon.comと、それを消費者に配送することで利益を得ているFederal Expressとの関係に相似している。

しかしながら現実は、オンライン広告の「提供」ビジネスと「販売」ビジネスとでは、相対的に販売側にシフトして投資する企業もある。具体的には、販売ビジネスへの投資は世界規模で約2~300億ドルにも見積もられるのに対して、提供ビジネスへはその1/20に満たないこともあるという。

通常、広告提供ビジネスというのは、媒体主と広告代理店を相手にしている。媒体主向けは、販売した広告が適切なページやサイズで表示されるかどうかを、広告サーバー上で管理し、広告主や代理店向けには、広告サーバーを通して配信されるパフォーマンスレポートを提供し、コンテンツや広告を有効に配信するタイミングの調整に早急に対処する。DoubleClickのような広告提供会社は、ひとつの広告サーバーを通してWeb上で異なるサイトを運営しているすべてのオンライン広告会社を計測し、レポートする拠点を持つことが強みのひとつだ。

Googleは、広告主や代理店に対してgoogle.comや、AdSenseプログラムのパートナーサイトに配置されるテキスト広告を販売し、消費者がクリックして発生する報酬によって収益を得ている。一方、DoubleClickは、「DART」と呼ばれるサービスを、広告主や代理店向けと媒体主向けに提供しており、広告主や代理店へはオンライン広告のプランから、配信、レポートの提供を行い、媒体主には広告の配置や広告在庫を最大限に販売するための査定ツールなどを提供している。

今回のDoubleClickの獲得は、DoubleClickが提供する広告配信メカニズムと、GoogleのAdSenseネットワークをともに機能させ、広告主にとってよりオープンなプラットフォームを構築し、広告主が広告キャンペーンの効果を測る上で必要な、より明確な測定基準を提供することを可能にするという。また、Googleとのコンビネーションにより、DoubleClickのDARTを利用している大手媒体企業が保有する、商品価値の高い広告在庫を販売する手助けを行っていく。

さらに、DoubleClickが所有する代理店や媒体主に対する専門的なノウハウと、Googleのインフラを融合させた、次世代のより革新的な広告提供技術や、オンライン広告の効率化と効果の改善を目指した新しいサービスの創出を目指していくという。