日本ヒューレット・パッカードは28日、中小規模環境向けのバックアップ製品群を発表した。ストレージ/テープドライブ分野で市場をリードする同社が今回ターゲットにするのは、各社が現在最も注力しているSMB市場。中小企業向けに抑えた価格帯の新製品投入で激戦区に挑む。

今回発表されたのは以下の5製品。

  • HP StorageWorks D2D120 Backup System
  • HP StorageWorks DAT160 テープドライブ
  • HP StorageWorks LTO Ultrium テープオートメーション
  • HP StorageWorks LTO Ultrium 1840 テープドライブ
  • HP Data Protector Express Software v3.5

"コストも時間もかけられない"中小企業のバックアップシステムのために

内部統制強化などの動きを受けてデータバックアップ/リカバリの需要が高まるにつれ、中小規模の企業においてもデータ保護の必要性および重要性が唱えられている。しかし、ただでさえ限られている中小企業のIT予算の中でも、バックアップシステムはその最たる分野。「データ保護が重要だとわかっていても、中小規模の企業ではバックアップシステムにコストも時間もかけることができない」(日本HP ストレージワークス製品本部 本部長 富岡徹郎氏)ため、安価なディスク装置を使ったコピーでもってバックアップの代替としているケースも多い。

米HPのストレージワークスディビジョン データプロテクション&セキュリティプロダクト ディレクター アダム・シュー氏は、SMBにおけるデータ保護には「2つのキーポイント(指標)」があるという。1つは「リカバリ時間の目標(Recovery Time Objective :RTO)」、もう1つは「リカバリ範囲の目標(Recovery Point Objective: RPO)」だ。

シュー氏によれば、「(ユーザは)ビジネスにとってどの情報(データ)が重要かを理解しておく必要がある。情報のすべてが同じ価値をもっているわけではない。飛行機の運航など絶対止めてはいけないシステムもあれば、帳票システムのように1日程度なら止めても差し支えないものもある。であれば、バックアップシステムも情報の価値、すなわちRTOとRPOに応じて変えていくべき」だという。低コストであることを重要視するSMBであれば、高可用性よりも運用の手間をかけることなくデータを確実にバックアップ/リストアしてくれるシステムが望まれる。つまり、RTOは数分~数日程度、RPOが数時間以内の、Disk-to-Diskのバックアップシステムや仮想テープ機能、テープバックアップ装置が、今回HPが出した解ということになる。

富岡徹郎氏
日本HP ストレージワークス製品本部 本部長

アダム・シュー氏
米HP ストレージワークスディビジョン データプロテクション&セキュリティプロダクト ディレクター

今回投入された新製品は青と緑の部分をカバーする。「中規模環境のバックアップシステムは低コストであることに加え、データの価値を見極め、どのソリューションが適切かを判断することが重要になる」(シュー氏)

新製品の概要

HP StorageWorks D2D120 Backup System

1.5TBのユーザ領域をもつDisk-to-Diskのバックアップ装置。最大4台までのサーバから同時バックアップが可能。仮想テープ機能を備えており、1次バックアップとしてネットワーク上のデータを統合した後、物理テープにバックアップすることも可能。ファイル単位のリストア要求にも対応しており、ランダムアクセスで必要なデータを短時間で引き出すことができる。スケジューリングバックアップも可能。価格は29万4,000円から。出荷開始は7月中旬。

HP StorageWorks D2D120 Backup System: デスクトップにも載る小ぶりな筐体も特徴的

D2D Backup Systemのイメージ: サーバごとにバラバラに行われてきたバックアップを一元管理できる

HP StorageWorks DAT160 テープドライブ

「DAT最大の容量とパフォーマンスを実現した」(日本HP)という容量160GB(カートリッジ1本、2:1圧縮時)をもつ第6世代のテープドライブ。バックアップスピードは50GB/時(2:1圧縮時)。2世代前(DAT72/DDS4)までの下位互換性を保証しており、過去の資産の移行もスムースに実現できるという。SCSIとUSBの両接続モデルがそれぞれ外付け型/内蔵型で用意されている。価格は14万7,000円(USB接続内蔵型)から。出荷開始は7月下旬。

HP StorageWorks LTO Ultrium テープオートメーション

次期標準規格である3Gb SAS接続をサポートしたテープオートメーション。1U、2U、4Uの3タイプが用意されている。価格は1Uタイプで82万円(税抜)から。

HP StorageWorks LTO Ultrium 1840 テープドライブ

LTO第4世代のテープドライブ。製品名の"1840"は、最大容量1,600GB(2:1圧縮時)、最大性能240MB/秒(2:1圧縮時)の2つを足した数字からきている。他社では2008年での対応が予定されているバックアップソフトウェアによる暗号化も同製品で早期に対応するという。価格は未定。出荷開始は8月。

HP StorageWorks DAT160 テープドライブとテープメディア。テープ幅は従来の2倍の8mmに

HP StorageWorks LTO Ultrium 1840 テープドライブとテープメディア。出荷開始は8月だという

HP Data Protector Express Software v3.5

「小規模環境に最適で、Windows環境のデータ保護運用を大幅に改善」(同社)するというバックアップソフトウェア。使いやすいGUIと暗号化対応が特長。なお、同社のテープ製品やD2Dにはシングルサーバ版が無償バンドルされている。価格はバックアップサーバ使用権が11万6,000円(税抜き)から。

■ ■ ■

シュー氏によれば、HPはバックアップストレージ製品(DAT、LTO)に関してすでにそれぞれ2世代先までのロードマップができ上がっているという。同社はLTO UltirumなどのDDS規格策定で中心的な役割を果たしてきており、国内DDS/LTOドライブ市場でもNo.1のシェアを獲得している。また、国内総ディスクストレージ出荷容量の18.4%がHP製という統計データ(IDC Japan, 5/2007)もあり、「日本の企業データはHPが守っている」(富岡氏)という自信も覗かせる。

今回のSMB市場向け新製品発表をもって、同社はバックアップシステムにおいて、エントリレベルからエンタープライズまで、すべてのレンジをカバーする製品ラインを得たことになる。リーディングカンパニーとしての自負と豊富なラインナップでもって、引き続きこの市場への投資と製品開発を続け、多様化する顧客のニーズに応えていきたい構えだ。