マイクロソフトら9社は27日、Windowsプラットフォーム/サービスを推進するための新たなコミュニティ「Wipse(ワイプス)」の発足を発表した。Wipseの目的はWindowsプラットフォームとサービスを融合した新しいユーザエクスピリエンスを普及啓蒙させることであり、そのためのテクノロジーの紹介や調査、研究、実証実験などを行っていく。

Windowsプラットフォームの普及を目指したコンソーシアム活動としては、1990年から2002年まで活動した「Windowsコンソーシアム」、2002年より現在も活動を続けている「.NETビジネスフォーラム」がある。新しく発足したWipseは、この.NETビジネスフォーラムの組織や資産を継承しつつ、改めてWindowsの新テクノロジー、特にインターネットをベースとしたサービス指向の技術や標準を基礎から普及啓蒙していくという。

Wipseの運営委員会には、マイクロソフトのほかにイースト、シーイーシー、東証コンピュータシステム、NEC、日本ヒューレット・パッカード、日本ユニシス、日立ソフトウェアエンジニアリング、富士通が名を連ね、発足時点では40社の企業が会員として参加している。会長は東証コンピュータシステム取締役社長の松倉哲氏が、事務局長はイースト代表取締役社長の下川和男氏が務める。

下川氏によれば、Wipseの基本的な活動は、各テクノロジーの部会単位で行っていくという。発足にあたっては「Open XML」、「Windows Live API」、「Microsoft Silverlight」、「WSSRA(Windows Server System Reference Architecture)」の4つの部会が設置される。

Open XMLは、Ecmaによって標準化されているXMLベースのドキュメント仕様であり、Microsoft Office 2007はこれを標準データ形式として採用している。広く普及しているMicrosoft Officeで作成されたデータは多く、これをWindowsだけでなくモバイルデバイスやその他のプラットフォーム間で共有することは今後のビジネスにおいて非常に重要なファクターとなる。Open XML部会ではOpen XMLを使ったアプリケーションやサービスの育成、標準化のための調査や研究、相互運用性に関する実証実験などを行うという。Open XMLはWipseの目指すデータ共有の中核となる。

Windows Live API部会では、マイクロソフトが提供するWindows Liveプラットフォームにおいてサービスを効果的に利用するために必要なTOU(Terms Of Use)に対する理解の促進を目指す。Windows Live APIはmashupの中核に位置付けられる。

Microsoft Silverlightはクロスブラウザ・クロスプラットフォームに対応したWebブラウザ・プラグインであり、ユビキタスの中核をなす技術である。Silverlight部会ではこの技術に対するセミナーの開催や情報の提供などを行っていくという。同時に、.NETテクノロジーとの相互運用や実案件への適用などをテストしていく。

WSSRAは分散環境におけるサーバシステム運用に関するドキュメントとデプロイメントキットで構成される概念。部会では既存システムの検証や、新規システム設計の際のリファレンスの検証などを行う。

Wipseではこれら部会の活動を通して、システムのインターオペラビリティの推進を図る。そのためには複数の会社での相互運用実験や接続実験、討議等が不可欠である。そこでSNSやブログ、メーリングリストなどによって積極的にコミュニケーションおよび啓蒙活動の場を提供していくという。

また、マイクロソフトは2006年11月にイノベーションの創出をサポートする「マイクロソフト イノベーションセンター」を設立している。同センターではマイクロソフトが保有するリソースを活用して国内IT産業における技術研究や製品開発/検証を支援している。同社CTOの加治佐俊一氏は、Wipseの活動とイノベーションセンターが連携することで、継続的なイノベーションの創出を実現していきたいと語る。

「ソフトウェアとサービスによって新しい世界を実現するというのがマイクロソフトの目標。そのためにはWipseの推し進めるインターオペラビリティが非常に重要となる。」(加治佐氏)

発表会ではWipseの立ち上げに先駆けて行われた活動の一例として、Open XMLを利用したいくつかのアプリケーションおよびMicrosoft Silverlightの紹介が行われた。Wipseでは文書フォーマットを、相互運用性を実現する上での重要なファクターと捉えており、Open XMLはその有力な候補として普及を推し進めていきたい考えだ。