経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は27日、自動車や携帯電話などの組み込み製品に搭載される組み込みソフトウェアに関わる企業や技術者を対象とした調査報告「2007年版組み込みソフトウェア産業実態調査報告書」を発表した。組み込みソフトウェアの開発費が3兆2700億円を突破したほか、製品出荷後に品質問題を起こさなかった企業と30%以上起こした企業の双方とも前年に比べて増加するなど、技術者不足などを背景とした組み込みソフトウェア業界の"二極化"も明らかとなった。
同調査は2006年12月から2007年3月にかけて、組み込みソフトウェアに関わる工業会・協会に所属する約7500社の経営者や事業責任者、プロジェクト責任者らを対象に行ったもので、293社311事業部門、769人の技術者から有効回答を得た。
組み込みソフトウェアの実態調査結果を報告するIPAのソフトウェア・エンジニアリング・センター 組込み系プロジェクトのプロジェクトリーダーである門田浩氏 |
同調査の推計によると、組み込みソフトウェア技術者は前年比21.6%増の約23万5000人となった。また、不足する技術者数は前年比4000人増の9万9000人となるなど、組み込みソフトウェア技術者に対する需要が急速に拡大していることが明らかになった。さらに、組み込みソフトウェアの開発費も同19.8%増の3兆2700億円となった。組み込み製品の開発費全体に占めるソフトウェア開発費の割合を見ると、前年比5.8ポイント増の46.2%となり、ソフトウェア開発費の比重がますます高くなっていることが分かった。
また、製品出荷後に品質問題を起こした製品の比率については、「なし」と回答した企業の割合が2005年は8%だったのに対し2007年は30%に増加するなど、製品供給において品質の高いものが増えている。一方、品質問題を起こした製品の比率が「30%以上」と回答した企業を見ると、2005年の14%から2007年は27%と倍増するなど、組み込みソフトウェア業界における"二極化"が鮮明になった。実態調査の公表を行ったIPAのソフトウェア・エンジニアリング・センター 組込み系プロジェクトのプロジェクトリーダーを務める門田浩氏は「高品質な製品を供給する企業にスキルの高い技術者が増える一方、多忙などの理由で品質が劣化する企業も増えている」と二極化の原因について述べた。
不足する人材についても、組み込みソフトウェア開発の大規模化に伴い、分散する複数拠点間を結んで1つの開発チームとして機能させるブリッジSEの不足率は76%、品質管理を行うQAスペシャリストの不足率は60%に上り、人材不足感の実態が明らかになった。また、エントリレベルの技術者の不足率は28%だったのに対し、ハイレベルの技術者の不足率は65%となるなど、人材の不足感に偏りがみられる結果となった。
また、人材不足を訴える企業が63.4%と半数以上を占める一方で、人材余剰の企業も26.7%存在するなど、組み込みソフトウェア業界において「技術者の流動性をどう高めていくか」(門田氏)が大きな課題となっていることが浮き彫りになった。