マイクロソフトは、企業向けセキュリティ製品「Microsoft Forefront」と、システム運用管理製品「Microsoft System Center」の製品ラインナップを強化し、中小規模事業者向けに新たな製品の提供を始める。「セキュリティと管理が融合している」(米Microsoft セキュリティプロダクトマーケティング担当シニアディレクター マーガレット・アラカワ氏)という中小企業の現状と、それに伴うセキュリティとシステム運用を共通の運用管理基盤で実現したいとのニーズに応え、Microsoft Forefront Client Security 日本語版と、Microsoft System Center Essentials 2007 日本語版の2製品を順次、日本市場に投入する。

両製品の提供は25日に開催されたカンファレンス「Microsoft Security & Management Conference」にて発表された。本誌既報の通り、カンファレンスではマイクロソフト代表執行役兼COOの樋口泰行氏が登壇し、「マイクロソフトが考える未来を見据えたセキュリティと運用管理によるITインフラ投資の最適化」をテーマに基調講演を行っている。

講演後の記者会見で樋口氏は、自身のダイエー時代を振り返り、「電子マネーが普及し始める中、ダイエーは(IT化の点で)かなり遅れていたため、すぐに対応できる状況ではなかった」と話す。ダイエーは長期間、IT投資を凍結しており、コンシューマサイドのIT化の進展と、持続的な競争力の強化のために、ITに真剣に取り組まなければ「サービスそのものを提供できなくなる」(同)事態を招きかねない。そのため、ダイエー時代は電子マネーへの対応をはじめとするIT化を加速させたのだという。

マイクロソフト代表執行役兼COO 樋口泰行氏

企業のIT化への取り組みについて、樋口氏は「IT基盤の最適化が重要、中でもセキュリティとシステムマネジメントが非常に重要だと考えている」との認識を示す。IT基盤を最適化することで、複雑化するITシステム管理の解消、機敏なITインフラの実現、情報の保護とアクセスコントロールが実現するためだ。そして、ここでセキュリティとシステムマネジメントという課題が浮かび上がってくるのだ。

今回発表されたForefront Client Security 日本語版と、System Center Essentials 2007 日本語版は、こうした背景をもって登場した新製品。

Forefront Client Security 日本語版は、クライアントとサーバOSのセキュリティを包括的に保護する製品で、ウイルスやトロイの木馬といったマルウェアだけでなく、スパイウェア、ルートキットなどの脅威にも対応する。IT管理者の大きな負担となっている定義ファイルの更新とセキュリティパッチの更新を、Windows Server Update Services(WSUS)経由で一度に配布することが可能。定義ファイルやセキュリティパッチの配布状況を管理する「展開状況レポート」や、エンドユーザのセキュリティに関わる状況を管理する「警告状況レポート」など、様々な状況を即座に把握できる画面を1つのダッシュボードで提供する。

7月2日からボリュームライセンスプログラムを通じて販売を開始する予定。

System Center Essentials 2007 日本語版は、中小規模事業者向けの統合運用管理ソリューション。容易なセットアップ、統一的な管理操作が特徴で、IT管理者の日々の業務を簡略化するために、運用管理などのナレッジをシステムに盛り込むことで、コスト削減と生産性の向上を実現するという。

8月1日からボリュームライセンスプログラムを通じて販売を開始する予定。

様々な課題に対し、共通の管理プラットフォームを用いることで、生産性の向上、運用の簡略化、システムの統合を実現する

樋口氏は、「ソフトウェアだけではとうてい実現できなかったことを、ハードウェアレベルでコラボレーションすることで実現できる」と語り、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏を紹介した。

インテル 代表取締役共同社長 吉田和正氏

吉田氏は企業に必要なこととして、「競争力をつけていくことと、サービスの差別化が非常に大事」と語る。続けて「それプラス、ITを使って連携をどうとっていくか。そうなっていくと、運用管理とセキュリティをどうするか、考えなければならない」と課題を提示する。「企業の情報システム部門にとっては、セキュリティと運用管理を利用して、どう競争力とサービスの差別化を図るか」(同)が重要なのだという。

その上で吉田氏は「マイクロソフトとインテルが力を合わせて実現していくものは、高い付加価値を持っているのではないか」と語り、両社共同の取り組みを紹介した。

インテルは、Microsoft System Management Server 2003の拡張機能を、マイクロソフトと共同で開発し、現在、Add-onを提供中だ。資産管理機能の強化としては、PCに電源が入っていない状態でも、PCの資産管理を実現する機能や、PCの電源を遠隔地からセキュアな環境でOn/Offする機能が提供されている。サポートデスク業務としては、リモートでのBIOS設定を可能にし、PCの障害診断をリモートで実行する機能などを提供している。

こうした障害の診断などは、インテルの企業向けブランド「インテル vPro プロセッサー・テクノロジー」で可能になり、現在はこれに加え、ノート向けブランド「インテル Centrino Pro プロセッサー・テクノロジー」も展開中だ。

今後の、System Center Configuration Manager 2007対応の拡張機能をインテルが提供、同SP1からインテルの次世代拡張機能のサポートをマイクロソフトが提供するなど、共同での取り組みを強化していく。

また、今年下半期からは、インテル Xeon プロセッサー搭載のインテル製サーバー用マザーボードに、System Center Essentialsと、System Center Operations Manager 2007を同梱し、インテルがサーバーメーカーに提供する予定だという。この取り組みについて、吉田氏はエマージング市場における展開に期待を寄せていた。

吉田氏は、「いかに早く、お金をかけずにサービスを提供できるか──タイムリーにサービスの差別化を図ることで、結果的に競争力をつけることができる」と話していた。

従来のビジネスPCは性能と、性能あたりの消費電力こそ優秀だったが、今後はセキュリティと運用管理が重要になる