メディア業界の有力実業家Rupert Murdoch氏が率いるNews Corp.が、保有するSNSサイトのMySpace.comの米Yahooへの売却を検討していると、複数の欧米のメディアが報じている。News Corp.が提示する売却条件はYahoo全株式の25%との交換。6月20日(現地時間)での米Yahooの時価総額は約370億ドルで、交換条件の金額は約93億ドルとなる。News Corp.は2005年7月にMySpaceを5億8000万ドルで買収している。
米Yahooは前日にあたる19日にトップの交代を発表したばかり。これまでYahooを率いていたのはTime Warner出身のTerry Semel氏で、2000年前後に低迷にあえいでいたYahooを広告を主体としたメディア企業として蘇らせることに成功した。だがGoogleらライバルとの競争が激化するなか、最近のYahooは再び苦戦を強いられるようになっており、Microsoftとの合併説や今回のMySpaceを含む競合サービスの買収話がたびたびささやかれている。今回のNews Corpの提案がそのまま成立するかは難しいところだが、買収や合併はYahooが生き残るための有力な選択肢となる。新CEOの座に就任した共同創業者のJerry Yang氏に求められるのは、どの企業をパートナーに引き入れるかの見極めだろう。
今回YahooにMySpaceの売却を打診したとされるNews Corpは、5月初旬に経済誌のWall Street Joural(WSJ)を発行する米Dow Jonesに買収提案を行っている。この買収提案にあたってはDow Jonesの株式を所有する創業者のBancroft一族が強行に反対しており、現在News Corp.のMurdoch氏と話し合いを求めているといわれている。だが、遅々として進まない交渉にBancroft一族や経営陣の中でも分裂が始まっており、進展がさらに難航している。
こうした交渉の一方で、MySpaceの創業者の1人である投資家のBrad Greenspan氏が6月20日(現地時間)、Murdoch氏が示した1株あたり60ドルと同じ条件でDow Jonesに買収提案を行っており、その行方に注目が集まっている。同氏の提案はダッチオークション(自動入札)方式で決定権のない同社株式25%を取得するもので、WSJの報道によれば、Dow Jonesの経営陣に送った手紙の中で「現行の選択肢に対するもう1つの魅力的な提案」と述べており、「買収が成立すれば、Dow Jonesの電子媒体としての価値をより高めることができる」と自信を見せる。Greenspan氏はNews Corp.によるMySpace買収の際、580億ドルの買収金額を「不当に価値を下げた提案」として訴訟を起こしており、News Corp.とは対立関係にある人物とみられる。
News Corp.によるDow Jones買収提案やGoogleによるDoubleClick買収、Yahooのトップ交代など、インターネットとメディア事業を巡る業界再編の波は激しさを増しつつある。確実なのは、渦中に巻き込まれた企業が生き残りをかけてパートナーを探し合い、最終的に一握りのメディアグループへと収れんする結果へと落ち着くことだ。