電子情報技術産業協会(JEITA)は6月5日、東京港区・虎ノ門パストラルで「情報端末フェスティバル2007」を開催。ディスプレイやHDDといったPCのキーコンポーネントから、金融端末やPOS端末などの業務用装置まで、市場動向や調査を報告するイベントとなっていた。

開会式に続き、基調講演「経済産業省の情報政策について」、特別公演「ICT(情報通信技術)を通じて、世界の持続可能な発展にどう貢献するか」が開催された。

基調講演「経済産業省の情報政策について」

経済産業省の有馬伸明氏は、ITを活用した経済成長、生産性向上について講演

基調講演「経済産業省の情報政策について」では、壇上に経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課 課長補佐の有馬伸明氏が立ち、ITを活用した経済成長、生産性向上について講演した。日本の問題点として、ソフトウェア開発でIT投資コストが増加、強い自前主義、IT投資の効率性、グローバル化の遅れなどを指摘した。

IT投資では、自動車制御システムや高機能携帯電話の分野において組み込みソフトウェアの開発費用が重くのしかかっている現状を報告。すでに1980年代の銀行の基幹システムに匹敵する500万行のソフトウェア、100億円の開発費にもなっている。ただし、組み込みソフトウェアはハードウェアの性能を決める大きな要素のため、削減が難しい。

そこで重要になってくるのが自前主義の見直しとなる。たとえば物流管理ソフトでは、日本では企業の約40%が自前で用意しているが、アメリカは約7.5%。一般に流通している汎用ソフトウェアの利用は、日本では10%前後だが、アメリカは50%を超える(残りは自前と汎用が混在)。業界ごと、企業ごとに異なるが、競争領域と非競争領域を切り分け、非競争領域では業界標準のソフトウェアを用いるか、ソフトウェアの共同開発を行い、開発費を削減する必要があるのだ。すでに日本でも始まっているところもあり、その1つが自動車業界のソフトウェア共同開発「JasPar(Japan Automotive Software Platform and Architecture)」である。日本の開発力向上、国際競争力強化の面で期待されている。

基本的な考え方としては、IT投資の選択と集中が重要だという。競争部分については攻めのIT投資を行い、非競争部分については汎用ソフトウェアで対応したり他社との共同開発でコスト削減を行う。これが有効となる。さらに、自前で開発したソフトウェアは、外販することで複数のユーザーからフィードバックを得て信頼性や競争力を強化できるとした。この戦略を推し進めることで、生産性向上と競争力強化を図るべきとのことだ。

経済産業省では、「IT化の進展と我が国産業の競争力強化に関する研究会」を立ち上げ、問題点、解決方法を探っている。今後も、IT人材の育成、省庁内でのシステムの共通化、意見交換の場を提供するなどをすることで支援していくとした。

特別講演「ICT(情報通信技術)を通じて、世界の持続可能な発展にどう貢献するか」

イースクエア 代表取締役社長 ピーター D. ピーダーセン氏は、環境問題への情報化が果たす役割について述べた

特別講演「ICT(情報通信技術)を通じて、世界の持続可能な発展にどう貢献するか」では、イースクエア 代表取締役社長 ピーター D. ピーダーセン氏が、環境問題にITCがどうのように貢献できるかを講演した。

世界各地で、地球温暖化をはじめとした環境問題が切迫した状況になっていることは、すでに知られている。さらには、この問題が企業戦略に影響を与え始めているという。たとえば、廃棄物、生態系の変化、資源制約の強化、化学物質のリスクなどがそれにあたる。各企業は、環境問題を回避しつつ世界的に持続可能な発展を行えるかどうかが重要になっている。

1950年から2000年にかけての成長を比べると、人口は240%増加しているのに対して、石油消費量は726%、電力生産は2133%も増加。グローバルな基準作り、ガバナンス・環境法規制の強化が急務だ。あわせて1980年以降に情報化時代が政治やビジネスのキーワードとなり、2000年前後から地球環境問題と情報化との関係性が注目を集め始めた。世界各地で、社会的に公平で、生態系を保全しつつ機能する高度な情報社会が望まれているとした。

このような社会を実現するためには、資源・エネルギーの循環利用、脱物質化が必要となるのだが、そこでICTが重要な役割を果たす。たとえば、重金属や生態系に蓄積する有害物質などが含まれない製品を開発する。買い替えではなくアップグレードで対応できる機械を製造する。あるいは、500年単位でマテリアルを循環させる仕組みを構築するといったことだ。

世界では、ITU(International Telecommunication Union)や14~15社のICT関連企業が、共同で地球規模での貧困撲滅や公平な情報社会の構築に向けた取り組みを行うプロジェクトを推進。環境問題などで破綻を起こさない社会の構築に役立つ具体策を探っている。効率に関しては日本は世界トップレベルだが、世界的に見てこのような取り組みに弱い。日本でも国家戦略としてこのような取り組みを推進すべきだとした。