韓Hynix Semiconductor(Hynix)は、金鍾甲(キム ジョンガプ)氏が代表取締役に就任して50日目を迎えたことを受けて「50日 戦略課題共有ワークショップ」を開催し、今後の経営方針についての発表を行った。キム氏は今年(2007年)3月30日に同社の代表取締役に就任し、「第2の創業」として経営などを一新すると宣言。2010年までに半導体メーカとして世界第3位を目指すという目標を掲げている。

10年後には世界トップへ

今回発表された同社の新経営戦略は、「R&Dの強化」「他社との連携」「長期的戦略の設立」の3つを柱としている。R&Dの強化については、これまで生産性向上や原価節減など現場主義の方針にのみ留まっていたことを省みて、大量生産よりもR&Dに投資を集中させる。これにより特化技術を開発し、従来のDRAMやNAND型フラッシュメモリだけを生産するというビジネスモデルから脱却し、利益性を高めて運用分野の多様化を図るという。

また他社との連携については、顧客会社はもちろん、必要であれば競合他社との提携も行っていくという戦略を提示した。これにより、リスク分散を図りたい考えだ。

長期的戦略の設立に関しては、これまで事業目標を1年ごとにしか立ててこなかったという反省から、今後は3年、5年、10年という段階別の戦略を立てていく。さらに「1年に1つ以上は世界最高の製品を作る」という目標を立て、技術力を高めていくという。こうした戦略のもと、同社は3年後の2010年には世界の半導体メーカ第3位に、そして10年後の2017年までは世界トップを目指すという。

ビックディールの落とし子

Hynixは1983年、現代電子産業という会社名で設立された。その名の通り、自動車メーカとして有名な現代(ヒュンダイ)系列の企業である。同社はDRAMの生産などで成長を続け、1999年にはLGグループの半導体メーカであるLG Semiconを吸収合併し、会社規模を拡大した。

この吸収合併は当時の金大中大統領による「ビッグディール」政策の下に行われたものである。ビッグディールは大規模事業交換とも言われ、力を付けすぎた財閥企業を対象に、半導体分野を始めとした産業分野の事業交換などを行ったものである。

Hynixもこのビックディールの落とし子だが、当時、莫大な負債を抱えていた同社はたちまち力を弱め、あわや企業売却かというところまで追い詰められた。そして債権銀行によるワークアウトが開始された。これと同時に同社はDRAMなど核心技術以外の多くの部門を売却、分社化したほか、2001年には社名を現在のHynix Semiconductorと改めた。

同社は2003年には黒字転換を果たし、2005年にワークアウトからも脱却した。現在は経営が安定化しているが、以前のような危機を繰り返さないためにも、今回明らかにされた戦略は同社にとって重要である。

なお、3年、5年、10年後の段階別戦略に関するビジョンの詳細については、さらに50日後となる金鍾甲氏の代表取締役就任100日目に発表する予定だという。