衝撃的な仏Alcatelと米Lucent Technologiesの2006年4月の合併発表から約1年、再び業界再編の波がネットワーク業界に到来しつつある。米Wall Street Journal紙をはじめ複数のメディアが5月29日に報じたところによれば、企業の音声/データ統合に使われる通信機器メーカー大手の米Avayaがその身売り先を求め、複数の投資会社らに接触しているという。交渉相手としては投資会社のほか、合併や部門売却を前提として、ライバル企業にあたる加Nortel Networkの名前も挙がっている。
VoIPを主軸とした通信機器の分野では現在、Avayaのほか、Alcatel-Lucent、Cisco、Nortelなどの大手を中心に、新規参入の中小を含む多くのメーカーがひしめき合って競争を繰り広げている。Avayaはこの中でもトップ3の中にランクされる企業ではあるが、年々厳しくなる競合のなか、競争力拡大を目的として提携・合併相手を探していると業界内で噂されていた。それがAlcatel-Lucentの合併発表を境に拡大したものとみられる。
WSJ紙の報道では、交渉にあたった近い筋の話として、投資会社の米Silver Lake Partnersの名前を挙げ、Avayaの買収を前提とした話し合いが行われていると伝えている。同紙によればAvayaは2002年の経営危機以降、順調に業績を伸ばし、無借金経営で膨大なキャッシュフローを抱えているという。しかも売上のうちの半分は長期のサービス契約からもたらされるもので、投資会社にはこうした潤沢な資産が魅力に映っているというのだ。一方でAvayaは同業他社との合併も模索しており、直近ではNortelとの交渉を行っていたという。この話は金額や買収方法の面で折り合いがつかずに流れてしまったものの、現在も交渉自体は継続している。
実際、競合他社との合併は生き残りのための有力な手段となる。交渉の相手として挙がったNortelも、今後の競争を考えれば強力なパートナーが必要だ。現在Nortelでは企業向けの音声/データ統合ソリューション提供に向け、Microsoftとのアライアンスを組んでいる。MicrosoftのExchange Serverのようなソフトウェア製品とNortelの通信機器を組み合わせ、ソリューションとして企業に売り込んでいくためだ。ところがCiscoとIBMも同様の提携を組んでおり、成長市場をめぐるシェア争いが激化している。ここでAvayaを獲得することで、Nortelにとっても市場での勢力図を大きく塗り替えるチャンスとなる。
現在、Avayaを含む関係各社からの正式コメントは出ていない。同社は5月31日に開催予定だった投資家向けの説明会を延期したが、予定変更後の日程についてはまだアナウンスされておらず、今回の交渉が影響している可能性がある。買収観測が出た直後の5月29日の米ニューヨーク証券取引所での同社の株価は、前営業日にあたる先週金曜日の13.50ドル前後の水準から15%ほど急上昇し、15.89ドルで同日の取引を終えた。