欧州委員会(EC)は25日(現地時間)、EU文化大臣がテレビを中心とした動画メディアを規制する新指令「Audiovisual Media Services(AMS) Without Frontiers」を支持することで合意したことを発表した。新しい指令は、国境による障害を取り除いた従来のメディア規制に、広告モデルの導入などの規制緩和がなされた改訂版。すでに、欧州議会や閣僚理事会の承認を得ており、年内に発効となる。

新しいAMSは、1989年に制定されたEU指令「Television without Frontiers Directive」を改定したもの。この指令は衛星放送などの技術を利用した国境を越えるTV配信を想定したもので、今回の改定でもこの点に重点を置き、文化の多様性、弱者保護、消費者保護、差別への厳しい姿勢といった従来の規制モデルを柱とした。その上で、技術の変化、インターネットやコンバージェンスといった時代背景を考慮し、デジタル時代向けのメディア規制を目指したという。

主な改定点として、新規制では広告主の製品を番組中に登場させるプロダクトプレイスメントが許可された。これにより、広告の挿入による無料コンテンツをより柔軟に作成できるようになった。広告を放映できる時間はこれまで通り、最大で1時間12分だが、1日3時間という上限は撤廃された。ただし、子供向けの番組、映画、ニュースについては、30分に1度しか広告を挿入できない。

もう一つの争点だったのが、新事業者に適用される規制だ。ビデオオンデマンド・サービス事業者など、TV局ではないメディアサービスプロバイダが遵守する規制は、本拠地のある国の規制のみという点が明確に定義された(これまで、展開する国の規制も遵守の対象となるのかが論議されていた)。これとともに、加盟国が独自にメディア関連規制を策定できる柔軟性を残したという。また、他の加盟国のオンデマンドコンテンツを提供できるようにすることで、国内のメディア市場を開放し、メディア間の競争を奨励するともいう。

新しいAMSは、ビデオオンデマンド、モバイルTV、インターネットTV(IPTV)などの新しいメディア配信技術の登場を受け、2005年12月に提案された。すでに欧州議会、閣僚理事会の承認を得ており、年内に発効となる見通しだ。加盟国はその後、24カ月中に自国法で遵守しなければならない。

ECでは今後も「MEDIA 2007」などのプログラムを通して、テレビなどのメディア産業を多面的に支持していくとしている。