日本オラクルは、組み込みデータベース事業への取組みを強化する意向を表明。同社2008会計年度は、この領域の売上倍増を目指す。

米オラクルでは2006年3月に、日本オラクルでは2006年6月に組み込みデータベースの専任チーム「Oracle Embedded Business Unit」を設けており、世界的に高い成長が期待できる組み込みデータベースにいっそう力を入れていく方針。各拠点との連携を深め、国/地域ごとの活動成果、経営資源を国境を越えて活用していく意向だ。

米オラクル アジア・パシフィック Oracle Embedded Business Unit バイス・プレジデントのマーク・バートン氏

米オラクル アジア・パシフィック Oracle Embedded Business Unit バイス・プレジデントのマーク・バートン氏は「世界の組み込みデータベース市場はすでに大きな規模になっている。特に、中国、インドでは急速に成長している」と話す。同社によれば、インドから輸出された組み込みシステムと関連ソフトの市場は2003-2004に44%伸長、現在は16億ドルにまで達している。また、中国では9億ドルで、これは中国でのソフト販売総額の31%に相当する。

一方、日本については「組み込みデータベース全体への認知度が高まってきた」(バートン氏)と分析。米オラクルとしては「技術革新を重視しているが、日本の技術水準は高く、第3世代携帯電話が普及しているなど、先進的な状況にあり、日本で起こった現象は、将来、世界市場でも起こる。日本で展開できている最新のソリューションは、世界市場に持っていける」と見ており、日本市場に力点を置いていることを明らかにした。

国内での組み込みデータベースに対する需要は高まっており、すでにいくつかのサービスで導入が進んでいる。例えば、携帯電話において、アドレス帳やメールの情報、写真、音楽等のコンテンツの付加情報などの管理に使用されているほか、カーナビでは、観光地や公共施設、飲食店等の位置情報、コンテンツ付加情報の管理で、通信事業では、ネットワークのIP化に伴う加入者情報、呼制御情報の管理で利用されている。

日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏

同社は、省リソース機能に特化した組み込みデータベース「Oracle Berkeley DB」、高機能型インメモリー・データベース「Oracle TimesTen」、これら両方の機能を併せ持った「Oracle Database Lite」を提供している。日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長の三澤智光氏は「組み込みシステムは、業種や用途により、幅広いソリューションが求められる。他社は、分野ごとにさまざまな製品を出しているが、オラクルの場合、この3つで幅広いニーズに対応できる。この点は大きな強み」とアピールする。

組み込みデータベースで核となるのは「サービスの付加価値向上と、システムの運用コストの削減」(三澤氏)だという。ともに「単にデバイスのデータを収集して、蓄積するだけではあまり意味がない。バックエンドにあるデータベースとの連携が重要」(同氏)であり、組み込みソリューションは「データ管理とネットワーク連携による競争力の高い次世代サービス」(同氏)と位置づけている。同社の組み込みソリューションは「製品だけでなく、ビジネスモデル全般を支援するもので、複雑になりすぎているコード体系をパッケージで置き換えられることがポイント」(同氏)だ。

また、三澤氏は「組み込みソリューションのビジネスは、国内をみているだけでは十分ではない」と説明する。「携帯電話で言えば、世界全体の生産量のかなりの割合を、日本、中国、韓国で占めている」(同氏)ような状況があり、国内外それぞれの手法を相互利用するような態勢の整備が必要になるという。そこで同社では「グローバルに協調しながら、積極的に日本市場に展開していきたい」(同氏)としている。

この分野の事業では、パートナーとの協調が非常に重視されていることも特徴で、バートン氏は「オラクルのビジネス・モデルは、デルのそれとは異なっている。パートナーが成功しなければ、当社も成功できない」と述べ、「パートナーを助け、技術革新ができるようにすることが主要なテーマ」と考えているという。

社会におけるほとんどすべての局面にコンピュータとネットワークが溶け込んでいく「ユビキタス化」が進む中、組み込みデータベースに対するニーズはますます高まっていくと予想される。ただし、現状は依然、未開の部分が大きい。カーナビの場合、「組み込みデータベースの搭載はまだ1割程度」(日本オラクル システム製品統括本部 Embeddedビジネス推進部 セールス・ディレクター 竹爪慎治)だという。同社は今後、こうした潜在的なニーズを掘り起こす構え。カーナビゲーション・システムの場合、現在はファイルで管理されている地図データを組み込みデータベースで管理することにより、あいまい検索や空間検索など、より柔軟な検索サービスが実現できる。また、サーバーとのネットワーク通信機能と組み合わせることにより、最新地図データの変更部分だけ配信するサービスなどを提供することも可能だ。オラクルでは、こうしたサービスの実現を次世代の目標としている。