IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は15日、2006年上期の未踏ソフトウェア創造事業の成果から、天才プログラマー/スーパークリエータに認定した人物と、同機構が行っている事業の実績/展望について発表した。

IPAが行っている「未踏ソフトウェア創造事業」とは、ソフトウェア関連分野における天才的な人材の発掘/育成を目的とした事業。個人を対象としてソフトウェアのアイデアを広く公募(年2回)し、独創的と思われるアイデアを採択する。採択したアイデアに対しては管理面/資金面での支援を行い、事業化についての相談も受け付ける。この事業は年々知名度も高まり、応募件数は2000年に開始した時の2倍近くに達しているという。今回の発表で対象となった2006年上期の応募件数は213件、うち52件が採択された。

同事業でユニークなのは、採択したプロジェクトに関わる人材のうち、特に秀でた人物を「天才プログラマー/スーパークリエータ」として認定する点。今回は、採択し支援した52件の中から15名が認定された。同事業への採択をきっかけに、Googleや、はてなといった最先端企業への就職が叶ったエンジニアもいるほか、採用条件にスーパークリエータ優遇と明記する企業も現れており、優秀な人材の宝庫として企業からも熱い視線が注がれている。

今回の発表では、スーパークリエータに認定されたエンジニアの中から2人がデモンストレーションを行った。どちらもスーパークリエータの手によるものだけあって、秀逸なソフトウェアであった。以下、その内容を簡単に紹介しよう。

まず、京都大学大学院の松村郁生氏による「PatchService」のデモである。PatchServiceは、「ユーザ主導のWebサービス合成」を実現するプラットフォームだ。近年増加の一途をたどる、公開されたWebサービスをブラウザ上でヴィジュアルに組み合わせることができる。組み合わせる部品となるWebサービスは、コミュニティの手によりPatchServiceにあらかじめ登録される。同プラットフォームは、コミュニティという集合知を利用したWebサービスのレジストリと、それらのマッシュアップを容易に一般ユーザでも扱えるレベルで実現するためのヴィジュアルエディタが組み合わさったものと言える。

松村郁生氏

PatchServiceのデモ風景

次に行われたデモは、津山工業高等専門学校の井上恭輔氏による「Antwave」だ。Antwaveは、「ブラウジングコミュニケーター」を謳っており、ブラウジングしている人間同士がコミュニケーションをとることができるというアプリケーションだ。現在はスタンドアローンのWebブラウザという形態をとっており、同じくAntwaveを利用している人間のブラウジング履歴を参照したり、複数人で同時に同じページをブラウジングし、体験を共有することもできる。ブラウジング体験を共有しながら画面にフリーハンドで書き込みを行えたり、ページに対するコメントを言い合ったりと、これまでのWebブラウジングでは行えなかったコミュニケーション機能が満載だ。

井上恭輔氏

Antwaveのデモ風景

また、今回の発表では、未踏ソフトウェア創造事業の今後の展望も示された。概要は以下のとおり。

  • 海外展開支援 - 優れた個人/技術の海外展開をサポートするために、ベンチャーキャピタリストなどとの出会いの場の提供/コンサルティングなど
  • 未踏フォーラム(仮称)の開催 - これまで採択した1000人を超える開発者のコミュニティ、企業関係者との出会いの場などの形成
  • 開発者データベース(未踏iPedia(仮称))の整備 - 採択された開発者及びそのプロダクトなどに関する情報をデータベース化し、人材活用の基盤とする

このように、国外への規模拡大や経済界との関わりを深めることで、我が国におけるIT業界のさらなる発展を促すという。興味を持った方は、是非ともIPA 未踏ソフトウェア創造事業のサイトにアクセスして詳細を調べて見てほしい。

なお、現在公募中の2007年度2期は、例年9月末であった締め切りが6月15日に早まっている。応募を考えている読者は、急いで準備を整えよう。