銀行の多くが顧客中心型の戦略を持っているが、46%の担当者が、自社のITインフラはこれを実現するのに不利と感じているという。また、解決策として、SOA(サービス主導型アーキテクチャ)の実践や、標準プラットフォームへの移行を重要視している――5月9日に発表された、銀行とITシステムに関する調査書で明らかになった。

この調査は、欧州を主体とした金融業界団体のThe European Financial Management & Marketing Association(EFMA)と独SAPが、リテール銀行を対象に共同で行った年次調査。4年目を迎える今回は、44カ国180の銀行の366人を対象に調査しており、「Global Retail Banking Benchmark」として発表した。

これによると、約8割の銀行が顧客中心主義の戦略を敷いているが、差別化のための機能を持てずにいることがわかった。銀行は顧客および顧客セグメントに関するデータを収集、分析、検索することで価値を引き出そうとしているが、なかなか実現できずにいるという。

実際、2003年の調査では回答者の57%が「2007年まで定期的に顧客データを一貫性のある形で分析する」としていたのに対し、今回の調査で「実行している」と回答した人は20%にとどまったという。また、「顧客セグメント化戦略を最大限に活用している」と回答した銀行はわずか14%に過ぎず、2004年から7ポイントしか伸びていない。

顧客情報の分析において重要となるBI(ビジネスインテリジェンス)については、多くの銀行がインハウスのシステムと標準ソフトウェアを併用していく意向を示した。だが、「今後3年間で標準ソフトウェアをメインとして利用する」と回答した銀行の比率が前回の11%から今年は27%に上昇するなど、標準ソフトウェアに比重が高まっていることも明らかになった。

銀行の46%が「自社のITインフラが戦略的に不利になっている」と回答。この比率は、2004年の36%から10ポイント増加しており、SOAや標準システムへの移行を重視する銀行が増えているといえる。調査では、80%の銀行が、規制強化やSOA技術の発展などが後押しした結果として、標準プラットフォームへシフトしてきていることを感じていることも明らかになった。フロントラインツールの自動化については、2004年の調査では、ほぼすべての銀行が自動化を計画していると回答したが、今年の調査では、60%の銀行が部分的に自動化を実現しているにとどまった。

EFMAの事務局長、Patrick Desmares氏は、銀行は「目標を達成できない原因について分析する必要がある」と述べ、顧客情報システムを改善する必要があることを示唆した。