米IBMは3日(現地時間)、「自己組織化」技術をマイクロプロセッサの製造に応用したと発表した。貝殻、雪の結晶、歯のエナメル質を作り出すような自然のパターン形成プロセスを利用して、配線間に絶縁用の空隙を作成した。すでに最新の製造ラインに統合されており、2009年には同社製造設備で全面的に採用することになるという。

自己組織化プロセスを採用したPOWER6。ついに自己組織化技術が研究所から工場へ

この絶縁方式は、一般的に「エアギャップ(airgap)」と呼ばれているもの。コンピュータ・チップ内の銅配線の間に、ナノスケールの真空の穴が無数にあけられており、これが絶縁体として機能する。通常の絶縁体を用いた従来のチップに比べ、35%速く信号を伝えるか、あるいは15%少ない電力で動作できるようになるという。

真空は「究極の絶縁体」(同社)である。近接する配線間には静電容量が発生し、信号の遅延や熱の発生を引き起こすことが知られている。そのため層間絶縁膜には誘電率の低いlow-k材料が使われたりするが、真空の誘電率は最も低いので、配線間の絶縁体としては最適。「ムーアの法則で2世代分に相当する配線性能の向上をもたらす」(同社)という。

エアギャップを採用したチップの断面。配線間に絶縁のための穴が開いているのが分かる

この配線間の穴の大きさは直径わずか20ナノメートルで、現在の露光技術では作ることが難しいサイズだ。通常、回路パターンの形成にはマスキング・露光・エッチングといった処理を行うが、自己組織化の手法では、適切に混合した化合物をウエハに注いで熱する、というプロセスを採用するようだ。

この手法は、操業の中断や新しいツールを必要とせず、あらゆる標準CMOS製造ラインに組み込むことが可能だという。ニューヨーク州East Fishkillにある同社の最新製造ラインにすでに統合されており、2009年には同社製造ラインで全面的に採用される見込み。この技術はまず自社のサーバー製品ラインで使用され、その後、他社向けのチップにも提供されることになるという。