高画質で低コストのストリーミング配信を実現

Flash対抗と呼ばれるSilverlightとは何か?

開発者プラットフォーム部門ゼネラルマネージャーのScott Guthrie氏は、「豊かなグラフィックス・ランタイムとメディア・サポートを包含し、リッチなメディア体験とリッチインターネットアプリケーション (RIA)を実現する。非常に軽量に設計されており、エンドユーザーは20秒以内でインストールを完了できる」と説明した。同氏が真っ先に取り上げたのは、Silverlightのメディア機能だった。

ユニバーサルなWebとユーザー体験に優れたデスクトップを結ぶSilverlight

Silverlightのメディア機能

Silverlightでは、Webブラウザにおいて720p方式の品質のビデオ再生、DVDのようなコンテンツ操作が可能だ。配信方式はストリーミングとダウンロードをサポートする。「Windows Mediaをバックエンドにしたソリューションの場合、既存のストリーミング・ソリューションの3~4倍のコスト効率を実現する」という。

Silverlightのメディア機能に関しては、オンラインDVDレンタルサービス「Netflix」がインスタントウォッチング・サービスのデモを行った。Netflixは今年1月からオンラインで映画を再生できる新サービスを開始しており、これにSilverlightを採用する計画だ。

まずNetflixのサンプルページ上で映画『アンタッチャブル』の再生ボタンを押すと、プレーヤー画面が現れて、Netflixのロゴに続いて数秒で再生が始まった。ダブルクリックするとフルスクリーンに。画面上に再生/停止、早送り/巻き戻し、ボリューム調整などのコントロールを備え、DVD同様のチャプター操作も可能。NetflixのWebサイトと連動するのも特徴の1つで、再生中の映画を直接DVDレンタルリストに追加したり、レーティングを付け加えたりしてみせた。

現在のNetflixのインスタントウォッチングはInternet Explorerでしか利用できないが、Silverlight版はFirefoxでも再生できる。デモでは、Mac版のFirefoxで『レッド・オクトーバーを追え! 』を再生開始。ネット越しに『アンタッチャブル』を見ていたPCユーザーを招待し、二人が再生をシンクロさせて同時に『レッド・オクトーバーを追え! 』を見始め、インスタントメッセンジャーを使って感想の交換が行われた。Silverlightを使ったオンライン映画配信サービスを通じて、離れた場所にいるWindowsユーザーとMacユーザーが同じ映画、同じ時間を共有できる。まさに映画鑑賞のコラボレーションだ。

NetflixのSilverlightプレーヤーをフルスクリーン表示。画面上にコントロールパネル

MacでNetflixのSilverlightプレーヤーを起動

左がWindows版、右がMac版。2人のユーザーが「レッド・オクトーバーを追え!」の再生をシンク。わずかに再生シーンがずれているが、ほぼ同じシーンを見ながらチャットが可能

NetflixのNeil Hunt氏とAvenue A/RazorfishのDarin Brown氏

既存のオンラインビデオ配信のイメージを覆すようなSilverlightの優れた画質と操作性は、Netflixのようなオンラインビデオサービスを開拓する上で強力な武器になりそうだ。またNetflixのNeil Hunt氏は、「IT専門家の立場から言うと、これまで使っていたサーバとインフラを全て利用できるので、非常に簡単な作業でSilverlightベースのソリューションへと拡張し、映画プレーヤーを提供できる」と指摘していた。すでにWindows Mediaを使ってビデオコンテンツを配信しているサービスはSilverlightへと移行することで、手軽にユーザー層を拡大できる。

デザイナーと開発者のシームレスな連携

「デザイナーと開発者を同じプロジェクトで、いかに上手く協力させるか……今日の多くのテクノロジが抱えている問題である。冗談を言っているような気分になるが、これが真実だ」とGuthrie氏。「Expression Studio」は、手頃で使い勝手の良い統合デザインツールであり、また同社の開発者向けツール「Visual Studio」とのコラボレーションが可能。デザイナーと開発者のシームレスな連携を実現するのが特徴だ。

これまで、しっかりとデザインし、仕様を固めても、プロダクションプロセスにおけるデザイナーと開発者の不協和音が結果をこなごなにしていた

Web、Design、Blend、Expression Mediaで構成される「Expression Studio」

Microsoft開発者プラットフォーム部門ゼネラルマネージャーのScott Guthrie氏

Expression Studioについては、開発部門のグループ製品マネージャーであるWayne Smith氏がビデオ処理からの一連のデザインの過程を披露した。まずExpression Mediaに含まれるエンコーディングツール「Expression Media Encoder」を使ってAVI形式のビデオファイルをインポート。処理前と処理後の映像を比較できる2画面モードなどを駆使して適切なエンコーディング品質を決定。Expression Media Encoderに組み込まれたSilverlightテンプレートを使って再生ボタンなどを追加した。続いてExpression Designを使ってベクターグラフィックス部分を作成。これらを全てXAMLで出力し、最後に開発中のExpression Blend 2を用いて、再生を実行するJavaScriptと組み合わせ、ロゴを動かすアニメーションを設定して完成した。作成したインタラクティブ・アニメーションは、Expression Media Encorderのコンギジュレーション・フォルダーに移すことで、スキンとして再利用できる。

Expression Media Encoderでオリジナル(下)とエンコーディング後(上)を見比べながら、エンコード品質を調整

Designでグラフィックスを作成。XAMLで出力

開発中のExpression Blend 2を使って、ビデオとグラフィックス、JavaScriptを統合

作成したアプリをMIX07のサイトに組み込み、Windows Vista + IE7で表示

同じアプリをMac OS + Safariで表示

Mac上でWPFの表現力をアピール

その他、Silverlightをベースにした、双方向的でメディアリッチなサービスの例としてCBSのユーザー参加型のニュースが紹介された。

CBSのJonathan Leess氏

NY国際オートショーを題材にしたCBSのユーザー参加型ニュースサイト