Web 2.0アプリケーションのエンドユーザーと言えば、主に一般のネットユーザーだが、「企業内へと浸透する可能性」を討論するパネルセッションがWeb 2.0 Expoに用意された。パネリストはGoogleの企業向け製品チームのMatthew Glotzbach氏、Social TextのCEOのRoss Mayfield氏、ZimbraのCEOのSatish Dharmaraj氏だ。

Socialtextは、複数のユーザーが情報を編集できる企業向けWikiサービスを用意している。Zimbraはメールやアドレス帳、スケジューラなどを備えた企業向けウェブ統合コラボレーションシステムで知られる。パネリストは3人ともにWebサービス側であり、デスクトップ側から意見を述べるパネリストはいない。だが、エンタープライズ・ツールとしてのWeb 2.0については有用性を認めながらも、現状ではMicrosoftやIBM製品を置き換えるような存在には達していないと口を揃える。

左からSocialtexのRoss Mayfield氏、GoogleのMatthew Glotzbach氏、ZimbraのSatish Dharmaraj氏

ただし企業内にあっても、若い社員は自分たちが日常的に使っているWeb 2.0アプリケーションの利便性を求め始めているという。

「企業の電子メール・ポリシーに反すると分かっていながら、メッセージ検索や使い勝手の良さを求めてGmailに電子メールをバックアップする社員がいる。それがGoogleが企業向け製品を手がけ始めた理由の1つだ」とGlotzbach氏。

Dharmaraj氏は、企業におけるWeb 2.0アプリケーションの現状について、かつてインスタントメッセンジャーの使用がブロックされていた時に状況が似ていると指摘する。企業はWeb 2.0アプリケーションの利用を避け続けるだろうが、現場では「個人の生産性」よりも「チームの生産性」を重視する社員が増え、そのためのツールが求められるのが自然な流れだという。さらに「生産性を高めるカギはコラボレーションだ」とMayfield氏。「学校で宿題を見せあったらズルと言われたが、同じことを職場でやればコラボレーションだ」と喩えて笑いを誘った。最後にGlotzbach氏が「情報に群がる人はトラブルに陥るが、情報を共有する人は報われるだろう」とまとめた。

Dharmaraj氏によると、企業がデスクトップ・アプリケーションからWebベースのアプリケーションへの移行にふみ切るための判断ポイントは「機能」になる。すでにWeb 2.0アプリケーションの一部は生産性を損なわないレベルに達しているという。そこに気づけば、「25,000台のデスクトップにパッチを施す苦労が身に染みて分かっているCIOが、次にどのような行動を取るか予想できるでしょう」とDharmaraj氏。