マイクロソフトは17日、同社の「相互運用性向上への取り組み」について説明する報道関係者向けのラウンドテーブルを都内で開催した。小規模な説明会にもかかわらず、マイクロソフト側の出席者はダレン・ヒューストン氏(マイクロソフト 代表執行役社長兼マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント)、ジャン フィリップ クルトワ氏(マイクロソフト インターナショナル担当プレジデント シニア バイスプレジデント)、加治佐俊一氏(マイクロソフト 最高技術責任者)という豪華な顔ぶれ。その陰には、国内では取り上げられることが少ない同社の「相互運用性への取り組み」をアピールしたいという思惑が見え隠れする。

まずヒューストン氏が日本市場における相互運用性への取り組みについて説明した。同氏は2005年から同社が3年計画で日本市場に対して実施してきた「PLAN-J」は、相互運用性の向上があったからこそ実現したもので、「現在のビジネスは相互運用性なしでは成り立たない」とする。「消費者、企業およびその顧客、政府、ICT(Information and Communication Technology)産業のすべてにとって、利用できるテクノロジの選択肢を増やし、知財の社会的共有を促進する相互運用性の向上は非常に重要。コンピュータが"21世紀最大の発明"と称されるのは、データを共有できるようになったから」であり、マイクロソフトはその向上に力を尽くしてきたという。

つづいて説明を行ったクルトワ氏は「相互運用性とは、人々、情報、そして多様なシステムがシームレスに連携されること」とし、Novellとの提携によるWindows-Linuxの連携、OSPに基づく各種仕様の無償公開などを例に挙げ、「マイクロソフトは(製品/サービスの)設計段階から相互運用性を意識している」と自信を見せる。

また、同氏は「The Windows Principles」として以下の3つの原則を挙げた。

  • 原則I: コンピュータメーカー、お客様の為の選択…同社以外の製品/プログラムによるWindowsの機能追加、構成の変更を容易にし、可能であることを明言する
  • 原則II: 開発者への機会の提供…同社ソリューションとの競合の有無にかかわらず、Windows上で動作するあらゆる革新的なソフトウェアの開発に必要なツール、および情報の提供を明言する
  • 原則III: ユーザーのための相互運用性…システムおよびアプリケーションの種類にかかわらず、データ、やり取りされる情報、それらのセキュリティの管理方法をユーザが管理/選択可能であることを明言する

最後に説明を行った加治佐氏は、「オープンな標準がエコシステムを育てる」とし、文字コード、ネットワーク、ハードウェア、文書フォーマットなどの変遷においてマイクロソフトのテクノロジが標準仕様となり「エコシステムとイノベーションを推進してきた」とする。

だが、同社が「オープン志向」「標準への取り組み」を強調する一方で、Linuxコミュニティからの反発、Open XMLの標準化を巡るIBMとの争い、Vistaに対する欧州からの抗議など、その標準化への姿勢に疑念を抱かせる材料も浮き彫りになってくる。とくに同社に対する欧州の姿勢は端から見ると異常に思えるほど厳しく、Vistaに対しても"相互運用性"どころか「コンシューマに選択肢を与えていない」と追求の手を休めない。同社が名実ともに「相互運用性の向上に貢献している企業」と全世界から認められるには、もう少し時間がかかりそうだ。