韓国のIPTVが商用化を前に揺れている。放送と通信の融合という両面的な特性から、さまざまな業界の利害や、関係機関同士の見解の相違などが絡み合い、方向性がまとまらないのだ。
IPTV問題の論点
主な論点は3つだ。
1つはIPTVのもっとも大きな命題ともいえる、IPTVは放送か通信かという点。これに関しては「IPTVはマルチメディア」と見て放送法を改定し、IPTVを規制しようという放送委員会側の主張と、「IPTVは放送と通信の完全な融合型である」と見て新たな法律を作り規制しようという情報通信部側の主張に二分されている。
2つ目は大企業や特定市場の支配的な事業者による参入だ。たとえばKTは、大企業であり、同時に通信業界では支配的な事業者でもある。こうした事業者がIPTVに参入する場合、そのための子会社を作るなどして分社化するといった対策が考えられていた。
3つ目はIPTV事業の範囲だ。IPTVを全国サービスが可能なようにすべきか、あるいはサービス地域を分けるかで意見が分かれている。というのも、IPTVのライバルともなりうるケーブルテレビが、現在韓国においてサービス地域を分けられているからだ。大企業がIPTVを全国サービスすれば、彼らにとっては脅威となるだろう。
さまざまな業界の考えが交差しながら、これまで数度にわたる話し合いが行われてきた。
放送通信融合推進委員会の決定
放送通信融合推進委員会(以下、融推委)は、IPTVに関する最終方案を決定している。2006年から関係機関や業界と継続した話し合いを行ってきた融推委は、最終的なIPTV導入方案として、次のような決定を行った。
1つ目として、サービスの性格は放送を主サービス、通信を付随サービスとして定義。放送事業者として分類し、リアルタイム放送やVODに対する許可免許を受けなければならない。
2つ目として、事業に参入する場合、大企業や支配的機関・通信事業者に対しては、参入制限を設けないという意見が大多数であり、子会社分離を通じて参入しなければならないという意見が少数意見としてあったということだ。つまり、KTなどの大企業は分社化する必要がなく、直接参入できる可能性が大きくなっているということを意味する。
3つ目はIPTVの事業領域は全国を対象としてサービス提供すべきという意見が大多数であったものの、地域別に分けるべきという少数意見もあったという。
まだまだ論議必要か
融推委が表明したように、IPTVを本当に放送サービスとするのかについては、まだまだ論議が続いているところだ。
こうした融推委の表明は、KTなどの大企業にとっては良い材料といえる。一方ケーブルテレビ業界にとっては、同じ放送サービスでありながら、IPTVだけ大企業が分社化せずに全国サービスが可能であることから不満が多い。
ケーブルテレビ事業者に関しては、規制緩和を通じて規制の衡平を保つとしているが、その具体的な部分については触れられていない。
さまざまな利害や意見が絡み合うIPTV。一刻も早く商用サービスを開始したいものの、それまでにはたくさんの論議が必要となりそうだ。