欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は3日(現地時間)、米AppleのiTunes Storeの欧州での事業展開について、AppleおよびAppleが提携しているレコード会社に対し異議声明を送付したことを認めた。これは、EU競争法違反調査の際にとるステップの1つで、Appleとレコード会社は2カ月以内に文章にて弁護することができる。

この異議声明は、Appleが2004年より欧州主要国で展開しているiTunes Storeについてのもの。iTunesは提供国により楽曲カタログと価格が異なり、このような地域制限は欧州条約第81条に違反するというのがEC側の主張だ。

ECによると、iTunesは消費者のクレジットカード情報を基に居住国を識別し、居住国でないサービスは利用できないようにしているという。たとえば、ベルギー版iTunes Storeを利用する場合は、ベルギーの金融機関が発行したクレジットカードを所有していなければならない。そのため、消費者は購入できる楽曲と価格について、居住国により選択の自由が制限されることになる。EUでは、Appleとレコード会社はiTunes Storeを欧州で展開する際にこのような地域制限に関して合意したとしている。

ECの声明文では、レコード会社名を公表していないが、英Reutersらの報道では、仏VivendiのUniversal Music Group、Sony BMG Music Entertainment、EMI Group、Warner Music Groupの4社としている。

iTunesで楽曲を購入する場合、英国ユーザーは79ポンド、仏、独、ベルギーなどユーロ圏では99ユーロセント、デンマークでは8デンマーククローネとなっている。これを米ドルに換算すると、英国の価格は1.56ドル、ユーロ圏は1.32ドル、デンマークは1.43ドルとなり国によりばらつきがあるほか、米国の99セント、カナダの99カナダセント(0.85米ドルセント)と比較すると、割高となる。

iTunesの欧州域内価格差については、2004年に英国の消費者団体が英国版iTunes Music Store(当時)の価格は不当に高いとして、英公正取引局に苦情を申し立てていた。英公正取引局では、これをEC側に報告し、ECが調査を続けてきた。

今回の異議声明は、独占禁止法にあたるEU競争法違反調査の正式なステップとなり、Appleおよびレコード会社は今後2カ月以内に文章にて弁護することができる。また、口頭尋問を要求することも可能とされている。