ライブドアが4月2日から新たな経営体制に移行している。持株会社「ライブドアホールディングス」に商号を変更、傘下にある弥生、ターボリナックスなど15社を束ね、企業グループの中核として機能するとともに、一連の「ライブドア事件」により提起されている訴訟に対応する。一方、新たに「ライブドア」を設立、メディア事業とネットワーク事業を担う。新会社としてのライブドアは、「技術力」を前面に据え、CGM領域で先行することを目指す。
「ライブドアホールディングス」の社長には、従来のライブドア社長の平松庚三氏が就任する。持株会社の100%子会社となる新生ライブドアの社長には、同じく上級執行役員メディア事業部長の出澤剛氏が、同副社長には上級執行役員ネットワーク事業部長の照井知基氏が就任する。資本金は4億円で、従業員数は約280人、旧ライブドアから継承したポータルサイト運営事業、データセンター運営事業を展開していく方針だ。平松社長は「やっと新しいスタートラインに立てた」と話す。
左から、ライブドアホールディングスの平松庚三社長、新生ライブドアの出澤剛社長、同照井知基副社長 |
新たなライブドアは、メディア事業ではポータルサイト運営による広告収入などが約25億円、ネットワーク事業ではデ-タセンターによるホスティング事業で、こちらも約25億円の売上があるという。同社はこれらのうち、ポータルサイト「livedoor」をさらに活用したコンテンツ事業を重点化する意向を示している。
旧ライブドア時代から、同社はポータルの強化に注力、ユーザー数を伸ばしてきたが、2006年1月、東京地検特捜部が強制捜査に踏み切り、ライブドア事件が起こった。事件の影響でユーザー数は下降するとみられたが、同社によれば「ユニークユーザー数は事件後も減っていない。2007年2月には月間1,800万を超え、過去最高になっている(出典: ネットレイティングス)」という。
しかし、同社はポータルへの集客力拡大を志向しているわけではない。これまでポータルサイトというものは、同一のサイト内に、検索、ニュース、さまざまな情報、電子商取引など幅広いサービス、コンテンツをそろえ、サイト内完結型の基盤を整え、ユーザーを囲い込んでいた。それが「Web2.0への移行のなか、ユーザーは目的や用途に応じて好きなサイトを組み合わせて利用している」(出澤社長)状況であり、「コンテンツの作り手、送り手の境界線はなくなってきている。ポータル一辺倒から、CGMへと動いている」(同)とみている。
そこで、具体策として同社では、次世代型ブログサービス「PRAC(仮称)」を4月下旬から提供する。このブログでは、エンドユーザーが書き込んだ記事内容を、カテゴリーごとに分類、内容が類似した記事を自動的につなげることで「コミュニティ」を形成、同じような嗜好をもったブロガー同士の接点を用意し、SNS的な要素を加味することで付加価値を創出、「広告媒体としての価値を高め、広告売上の向上を目指す」(同)という。同社はすでに「livedoor Blog」を設けているが、これは上級ユーザー向けとして継続し、「PRAC」は「Ajaxを大幅に活用するなどわかりやすく簡単に利用できるようにして、初心者を取り込む」(同)
さらに出澤社長は「データセンターをもち、保守、運用も手がけていることが、CGMで勝っていくための強みだ。アクセス急増にも耐えられるだけの基盤があり、ネットワーク事業とのシナジー効果が期待できる」と指摘する。同社は初年度で50万件以上のブログ開設を見込んでいる。
一方、企業など法人向け市場には次のような施策を打ち出している。
ライブドアが現在、一般個人ユーザー向けに展開しているブログ、SNS、ブックマーク共有などのCGM機能を、法人ユーザー向けソリューションとして販売し、収益に直結させたい考えで、当面はホスティングサービスを利用している約4,000社の法人顧客にこれらのコンテンツを利用するよう、提案していく。
また、これらのなかで、特にRSSリーダーを重視、海外市場への進出を狙う。同社は現状では、「livedoor リーダー」を提供、12万人の会員数を擁しているが、この英語版を提供「日本発の技術を海外でデファクトにしたい」(同)としている。従来、インターネット関連の事業領域では、ポータルとしての実力養成や、検索エンジンでの上位表示が成功のための過程と位置づけられ、優先度が高かったが、同社では「今後はRSSリーダーでNo.1になることが、ポータルや検索エンジンでNo.1になることと同じ意味をもってくると考えている」(同)
同社はポータルサイト「livedoor」による広告収入の貢献により、同社の2007年度(2006年10月~2007年9月)は、9月に単月黒字化を見込んでおり、これらの施策により2009年度には売上高100億円、営業利益率20%の達成を目標としている。
平松社長は「コーポレートガバナンス(企業内統治)とコンプライアンス(法令順守)は引き続き強化していきたい。これらの強化に終わりはない。会社が存続する限り、強化を続ける。2度と過ちはしない」と述べた。「ライブドアホールディングス」は「ガバナンスの強化」「コンプライアンス」「訴訟対応」「資金管理」「IR」の5つの機能を担当する。今回の措置は、それぞれの事業会社は本業に専念させることで効率化を図り「グループとしての価値を向上させる」(平松社長)のが狙いだ。