東川町で高校生たちが写真バトルを繰り広げる

全国から写真に青春をかける高校生が集ってその腕を競うフォトイベント「写真甲子園」。そして、国内外の写真業界に新風を巻き起こす新進気鋭のフォトグラファーに賞を贈る東川賞を中心とした「東川町フォトフェスタ」。この2大イベントを開催しているのが自然溢れる大雪山国立公園の麓にある北海道上川郡の東川町である。人口1万にも満たない北海道の小さな町が、日本でも有数の規模を誇るフォトイベントを開催しているのはなぜか? ある地方自治体が取り組む「魅力的な町づくり」についてお伝えしたい。

役場をはじめとして、東川町の文化施設が並ぶ通り。ここがフォトフェスタの会場の1つになる

地方自治体が主催するフォトイベントは数多く開催されている。しかし、東川町のイベントの歴史の古さと規模には少々驚かされる。東川町は、1985年に「写真を媒体として、国際的な交流と写真文化を通じ、世界に開かれた自然と文化が調和する活力と潤いに満ちた町づくり」を目指し「写真の町条例」を制定。国内外を対象とした「東川町フォトフェスタ」をスタートさせ、今年で24回目の開催となる。また、北海道から沖縄まで全国8ブロックから応募した252校から選出された14校の高校生が東川町に集結し、その技量を競い合い優勝校を決める「写真甲子園」もすでに15回目。各校から学生3名と監督1名で1チームを結成して出場するこのイベントの2008年の参加者は計56名にものぼり、これにサポートする町民、ボランティア、OB、OG、審査員、協力企業も含めると他には類を見ない規模を誇る写真の祭典である。

「写真甲子園」の授賞式などの会場となった東川町農村環境改善センター

東川賞作品展などが開かれた東川町文化ギャラリー

図書やビデオ、DVDの貸出しを行なっている東川町文化交流館。写真の町らしく「写真集とカメラ収蔵」の部屋も設置されている

開拓時代の農耕・農機具や軌道電車などの開拓の歴史の資料が展示されている郷土館。建物は旧役場庁舎を利用している

松岡市郎町長はこのイベントに関して次のように語る。「多くの専門家にご協力いただくことにより、東川賞と写真甲子園は高い評価を得る事ができ、都会の人たちと交流を持てるようになりました。そして、さまざまな出会いによって刺激をもらい、町は進化し成長しています。初めは参加していなかった住民たちも全国から集まった学生たちとの交流によって、積極的に参加するようになりました。これは、写真が町の原動力になっているといってもよいでしょう。写真甲子園は、今年14校ですが、来年は16校、さらにその先は18校というように野球の甲子園と同じように全国の高校が参加できるようなイベントにしていきたいですね。また、今年は40人中35名が女性でした。カメラ付携帯などで写真を撮る機会が多くなったことも関係しているのか、女性のパワーが写真の世界に力強く出てきたことを感じます。高校生の皆さんは3人で協力して作品を完成させ、ぜひ私たちのイベントに来年参加してください」

東川町町長であり実行委員会会長でもある松岡市郎氏。写真による町づくりをさらに推進している

東川町は、写真文化による町づくりを原動力にしながら、グルメ、物産、アート、観光、アウトドアスポーツなどにも力を入れており、日本各地で過疎や少子化が問題になる中で年々人口が増加しているという(2008年3月現在で7,727人)。

全国の高校生が集う「写真甲子園」とはどのようなイベントなのか? そして「東川町フォトフェスタ」では何が行なわれているのか? 小さな町が繰り広げる写真による町づくりを次回より紹介したい。

東川町はグルメにも力を入れている。町の新鮮な素材をふんだんに使ったラーメンが自慢の「蝦夷」もこの通りの近くにある。味噌ラーメンはオススメ!

9月1日よりスタートした本誌主催の「That's撮れ録れフォトコンテスト」第4回『いつまでも残したい「旅(情景・乗り物)」』に協賛するなど外部のフォトイベントへの理解も深い

次回予告!

「写真甲子園」の公開審査会でプレゼン中に町民との暖かい触れ合いを思い出して泣き出す参加者。一方で、審査委員長の立木義浩氏は作品に対して的確で厳しい批評を下す。高校生たちの熱い闘いの行方は?