必要な時に必要な情報を確認でき、迅速な意思決定に役立ってくれる社内ポータルは、ナレッジ共有の基盤として導入する企業が増えている。しかしコスト削減が叫ばれる昨今、特に予算が限られた中小企業においては、高額なシステムやソリューションを導入する余裕はない。そこで大きな力となってくれるのが、Google Appsだ。
企業向けには「Premier Edition」がお勧め
「Google Apps」は、「Gmail」「Googleカレンダー」「Googleトーク」「Googleドキュメント」「Googleサイト」といった各種アプリケーションを独自ドメインで利用できるWebサービスだ。アプリケーション同士の強い連携に加え、ネットワーク環境とブラウザさえあればどこからでもアクセスできる利便性から、全世界で1000万人以上ものビジネスユーザーに活用されている。そこで本連載では社内ポータル作りを通じて、Google Appsに関する機能や具体的な操作方法を解説していこう。
Google Appsには無料で使える「Standard Edition」、有料(9アカウント以下:1アカウントあたり年間50米ドル、100アカウント以上:1アカウントあたり年間6,000円)の「Premier Edition」、非営利目的の教育機関でのみ利用できる「Education Edition」という3種類のエディションが用意されている。
エディションごとの機能差は以下の通りだ。なお、登録時に表示されるGoogle Appsのサイトには「ユーザー アカウント数の制限なし」との記載があるが、実際にStandard Editionで作成できるユーザーアカウント数は現時点で最大50個となっている。
Standard Edition | Premier Edition | Education Edition | |
---|---|---|---|
価格 | 無料 | 有料(99アカウント以下:1アカウントあたり年間50米ドル、100アカウント以上:1アカウントあたり年間6,000円) | 無料 |
各アプリケーションの利用 | ○ | ○ | ○ |
99.9%のメール稼働率保証 | - | ○ | - |
Gmailのメール容量 | 約7.37GB(2009年9月時点) | 25GB | 約7.37GB(2009年9月時点) |
Gmailの関連テキスト広告 | 標準 | オプション | オプション(学生のみ) |
会議室や施設などの予約管理 | - | ○ | ○ |
モバイルでのアクセス | ○ | ○ | ○ |
管理者用コントロール パネル | ○ | ○ | ○ |
シングル サインオンなどAPIによる既存システムへの統合 | - | ○ | ○ |
メール移行ツール | - | ○ | ○ |
オンライン サポート | ○ | ○ | ○ |
重大な問題に対する電話などによる24時間365日サポート | - | ○ | ○ |
サードパーティ製アプリケーションとサービス | - | ○ | ○ |
このように、ビジネスユースであれば本来は99.9%のメール稼働率保証や、APIによる既存システムへの統合機能などを備えたPremier Editionの方が適しているだろう。
今なら期間限定で、30日間の無料トライアルも用意されている。しかしまだ「Google Appsで具体的にどんなことができるのか分からない」と感じている方も多いと思うので、本連載ではまず最初に無料版のStandard Editionをメインとした社内ポータル作成方法を紹介した後、アップグレードでPremier Editionのさらなる魅力に迫っていく予定だ。
ぜひ一緒に社内ポータルを作りながら、Google Appsの魅力を感じ取っていただきたい。
まずは管理者アカウントの登録
まず登録方法は、Google Appsのサイトにアクセスし、「無料試用を開始する」というボタンの下にある「Standard Edition」をクリック。次のページでStandard Editionの下にある「お申し込み」ボタンをクリックすると、管理者アカウントの作成画面に移行する。 ドメイン名や管理者の氏名、メールアドレスといった必要事項を入力すれば、登録自体は完了だ。個人でGoogle Appsの機能を試したいなど企業のドメイン名が使えないような場合には、年間1000円以下でドメイン取得が可能なお名前.comやVALUE DOMAINを利用すると良いだろう。
ユーザー名とパスワードを入力し、管理者アカウントの作成を行う |
メールに記載されているURLから、Google Appsの管理コントロールパネルにアクセスできる。通常は「http://www.google.com/a/指定したドメイン名/」となる |
管理者アカウントの作成が終わったら、次に必要となるのがドメイン所有権の確認だ。これはサービスの不正使用を防ぐためのもので、HTMLファイルをアップロードする方法と、CNAMEレコードを変更する方法の2種類がある。どちらかで確認ができればよいため、環境に応じて容易な方を選ぼう。なお、確認期限はStandard Editionが14日以内、Premier Editionでは21日以内となっている。確認作業中は管理コントロールパネルの上部に「完了するまでに48時間程度かかることがあります」と表示されるが、実際の作業では2時間もかからずに完了した。
これがGoogle Appsの管理コントロールパネルだ。まず最初にドメインの所有権確認が必要となるので、上部の「ドメインの所有権を確認」をクリック |
確認方法はHTMLファイルをアップロードするか、CNAMEレコードを変更するかの2通りから選べる |
「CNAMEレコードを変更」を選んだ場合、指定された文字列をDNSにCNAMEレコードとして追加してから「確認」をクリック |
これはVALUE DOMAINでの設定例。「cname google1234567890abcdef google.com.」のように、最後の「.」を忘れないようにしよう |
「HTMLファイルをアップロード」を選んだ場合、指定されたテキストが入った「googlehostedservice.html」というファイルを作成・アップロードして「確認」をクリック |
HTMLファイルに記載する内容は指定されたテキストのみ。あとはこれをサーバにアップロードすればOKだ |
ドメインに新規ユーザーを追加しよう
続いては、このドメインに新しいユーザーを追加する作業だ。現時点で利用できるのはアカウント管理者の自分だけなので、管理コントロールパネルの「新しいユーザーを作成」をクリックし、必要な人数分のアカウントを作成していく。
追加作業は一人ずつの個別入力だけでなく、CSVファイルによる複数ユーザーの一括更新にも対応。新規ユーザーに対して、新しいメールアドレスやログイン用URLなどのログイン手順をメールで送信することもできる。ただし、前述のようにStandard Editionで作成できるユーザーアカウント数は最大50個となっているので注意が必要だ。
管理コントロールパネルの「新しいユーザーを作成」から、新規ユーザーの追加が行える |
新規ユーザーの作成が完了した。「手順をメールで送信」をクリックすると、ユーザーに対してログイン手順がメールで送信される |
今回はGoogle Appsの概要や管理者アカウントの登録に関する手順などを紹介した。これで準備が整ったので、次回からはいよいよ社内ポータルの作成に移りたいと思う。皆さんもぜひ一緒にGoogle Appsを使いながら、その機能を試していただきたい。