個人にはハードルが高いイメージの強いシステムトレードだが、なかには自分でシステムを構築し、常に一定のリターンを実現している人もいる。その代表が、個人投資家の池田悟さん。システム開発会社でシステムエンジニアとして働いていた経験を活かして、現在はシステムトレードと裁量トレードを併用して、着実にリターンを上げている。池田さんに、システムトレードのポイントなどを聞いてみた。
損失拡大の打開策に始めたシステムトレード
――もともとシステムトレードから投資を始めたわけではありませんよね。
池田「最初はもちろん、大勢の投資家さんと同じように、裁量トレーディングでスタートしました。もともと株式投資からスタートして、FXにも興味を持つようになったのが2000年くらいでしょうか。当時はユーロが1ユーロ=100円前後でした。これは安いと思って、ユーロを買ったのです。
このトレーディングはうまくいきました。ユーロはどんどん値上がりして、含み益も増えてきました。
そうなると、『なんだ、こんなに簡単に儲かるものなんだ』と考えてしまいがちです。勘違いなのですが、結局、私もそのように思うようになり、そこからさらにユーロを買い増していったのです。
完全なビギナーズラックでした。最初にユーロを取引してから半年ほどもしてからでしょうか。ユーロがガクッと失速したのです。この時まで、含み益が出来るとどんどん買い増していましたから、当然、平均の買い付け単価は上昇しています。結局、投資金額は300万円くらいまで膨らんでいたのですが、ある日、気が付くと100万円まで目減りしていました。ロスカットされてしまったのですね。
その後も、何とか損を取り戻そうとして試行錯誤を繰り返していたのですが、なかなか元の水準に戻りません。それどころか、少しずつさらに損失が拡大したのです。
非常に焦りました。何か打開策はないものかと考えていた時、ある雑誌で読んだのがシステムトレードの記事だったのです。」
――最初は、どのようなシステムを作られたのですか?
池田「非常に簡単なものですよ。移動平均線からの乖離率を使ってサインを出すという単純なものから始めました。比較的長期のスパンでサインが出るスタイルで、1カ月か2カ月に1度、サインが出るくらいのものです。でも、結構優秀なシステムで、年2割くらいのリターンを得ることができました。
そこからいろいろと改良を加えていき、統計的な乖離分析や時系列分析を用いてサインが出るような仕掛けを作っていきました。時間のアノマリーを組み合わせたシステムも走らせています。
アノマリーというのは、たとえば「火曜日はドルが買われやすい」とか、「10時の仲値決めの時にはドルが上がりやすい」、「夕方5時に取引が始まるロンドン市場の値動きは、午後3時から3時半の東京市場での値動きとは逆の方向に行くケースが多い」というように、いわば過去の傾向から見て、そうなるケースが多いという値動きのパターンがあるのですが、それを組み合わせて、分析するという方法です。
正直、永遠に使えるシステムなど存在しない
――システムは常に改良を加えているのですか?
池田「そうですね。新しいアイデアを盛り込みながら、少しずつ改良を加えていっております。最近はAI、いわゆる人口頭脳のようなものを用いて、パソコンに学習効果を持たせるという試みも行っています。これは長期スパンでサインが出るというよりも、もっと短いスパンでサインが出るタイプのシステムです。とにかく昨年の値動きが非常に激しかったものですから、長期スパンよりも短期スパンでサインが出るシステムの方が、より効率良くリターンを稼ぐことができます。このシステムはまだ研究中ですので、いろいろとこれから改良を加えていこうと考えています。」
ーー使われるテクニカル指標には、どのようなものがあるのですか?
池田「MACDとストキャスティクス、乖離率、移動平均線、%Rオシレーターなど、システムトレードをやっている人たちにとっては一般的なものが中心です。このうちMACDと移動平均線は、トレンドフォロー系なので、どちらかというと、相場に一定のトレンドが発生している時に有効な指標になります。
もちろん、相場は常にトレンドが発生しているわけではありません。レンジ相場にある時は、こうしたトレンドフォロー系の指標よりも、ストキャスティクスや乖離率、%Rオシレーターといったオシレーター系の指標の方が、的確なサインを出します。」
――狙いは究極のシステムづくりですか?
池田「この点については結構な誤解がありまして、システムトレードをやっていると、どのような場面でも勝てる究極のシステムとは何かということを考えてしまいがちなのですが、正直、永遠に使えるシステムなど存在しないというのが、私の考え方です。したがって、常に複数のシステムを稼働させながら、運用成績の良いものを残し、悪いものは他の良いものと入れ替えるといったことを繰り返した方が、最終的に良い運用成績を残すことができるようです。」
インタビュー撮影 : 村越将浩
(後編に続く)
提供 : FXCMジャパン
国内の個人資産が、貯蓄から投資へと向かう中で、世界ではインフォメーション・テクノロジーと金融が同時並行的に発展しています。こうした環境変化を背景に、個人投資家がグローバルな外国為替市場へアクセスできるFX(外国為替証拠金取引)が発展してきました。
FXCMジャパンは2001年、市場の黎明期から事業を開始し、徹底した取引コストの低減として、他社に先駆け取引手数料を0円にするなど、先進的な取り組みを通じて、FXの発展を支えてきました。また、2008年6月11日には、拡大する事業規模に見合うよう、それまでの保全信託スキームを刷新し、お客様の資産保全の安全性と、カバー取引における流動性を両立した取引環境を実現しました。更に、2008年12月8日より、取引手数料無料のシステムトレード、らくちんFXの取り扱いを開始し、お客様へ提供する取引環境の拡充を図っております。取引手数料無料のシステムトレード、らくちんFX。詳しい情報はこちらから。
執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)
主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。