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東京商工リサーチが行った「2023年全国『社長の住む街』調査」。東京都港区赤坂や新宿区西新宿をはじめとするトップ5が不動の地位を保った一方、港区芝浦や江東区豊洲など順位を上げているエリアも存在します。これらの調査結果をもとに、富裕層が住む街について不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんが分析します。

( Money )

富裕層が「丘からおりている」、社長の住む街ランキングからわかること

SEP. 06, 2024 12:00 Updated DEC. 23, 2024 17:16
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東京商工リサーチが行った「2023年全国『社長の住む街』調査」。東京都港区赤坂や新宿区西新宿をはじめとするトップ5が不動の地位を保っている一方、港区芝浦や江東区豊洲など湾岸エリアが順位を上げる結果となっています。

これらの調査結果をもとに、富裕層が住む街について不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんが分析。不動産を「土地(街)」「建物」「管理」に分解したうえで、賃料をベンチマークに資産性を分析する考え方「コンドミニアム・アセットマネジメント」の視点から考察します。

  • 「2023年全国『社長の住む街』調査」でランキング6位に入った港区芝浦エリアの高層マンション

社長が好む街・物件とは?

「2023年全国『社長の住む街』調査」は、東京商工リサーチが2023年10月に発表したもの。上位5位は前回(2021年実施)と変わらず、上から東京都「港区赤坂」「新宿区西新宿」「港区六本木」「港区青山」「渋谷区代々木」がランクインしています。

一方、前回とは異なる動きとして「港区芝浦」(8位から6位)「江東区豊洲」(11位から9位)「中央区勝どき」(14位から12位)といった湾岸エリアが順位を上げているのが特筆すべき点として挙げられると思います。

  • ランキング結果※2023年全国「社長の住む街」調査より引用

社長が好む街・物件を属性別に分析

なぜ、上記のような結果となったのでしょうか。「資産承継系法人」の社長と「スタートアップ・起業系法人」の社長、大きく2つに分けて、それぞれの社長が好む街・物件の特徴を分析してみたいと思います。

「資産承継系法人」社長のケース

「資産承継系法人」は、昔ながらの富裕層で、承継資産の維持、増加を行うべく、法人を運営しているケースを指します。この層は法人での物件保有、または賃借を行い、自身がプライベートで住む住居は、法人社宅として経費により居住費用をまかなうことがあります。

こうした従来型の「社長」は地位(ちぐらい)を意識し、ランキングトップ5を占める不動の人気エリアを好む傾向があると推測されます。

(1)赤坂・六本木・南青山・代々木
従来、資産承継系の富裕層が暮らすエリア。
(2)西新宿
中央線、京王線、新宿線、小田急線エリアのフラッグシップターミナル『新宿』のタワーマンションエリアであり、各エリアの資産承継系の富裕層が『旗を立てる』街。

尚、こうした「資産承継系法人」社長の場合、これまでは新興エリアである湾岸等を嫌う傾向がありました。ただし、昨今では「富裕層が丘からおりる」現象が起きていると感じています。

その背景には、エリアの物件価格の高騰等を目にする中で、物件を"保有する"という視点から"投資対象の一つとして見る"傾向が強くなっていることがあります。

また生活の場所としても、津波や液状化、洪水などの災害に強いこと、歩道が広く商業施設等が増えつつあることなど、"実は住んでみたら快適"であるという点が理解されてきていると感じます。

富裕層が、新興エリアにネガティブな感情を持たなくなってきていることが、湾岸エリアが順位を上げるランキング結果に反映されていると考えます。

「スタートアップ・起業系法人」社長のケース

一方、起業の結果、新たな富裕層として台頭しているのが「スタートアップ・起業系法人」の社長です。特徴としては著しく忙しいこともり、アクセスに特化しつつ、「好物件仕様」のタワーマンション等を選ぶ傾向があると言えるでしょう。

そのため、ランキングの中でも「芝浦」や「勝どき」という、利便性と賃貸高級タワーマンションの供給が多い街を選ぶ傾向は顕著です。また、豊洲等のタワーマンションも東側エリアへのアクセスの利便性と、この10年間で培われたブランディング、商業用施設の充実度等から忙しい「社長」に選ばれていることが想定されます。

富裕層が「丘をおりる」現象は、物件価格へのインパクトも

従来型の富裕層と新たに台頭する富裕層とで、街を選択する基準が若干異なることがおわかりいただけたと思います。一方でランキングを分析すると、従来型のアッパー層も現在のトレンドにキャッチアップしていることが見て取れます。

従来型の富裕層に見られる「丘をおりる」現象は、物件価格の推移や今後の新たな物件の竣工、そして湾岸エリアの開発案件等を勘案しても、一定継続することが想定され、より賃料価格、物件価格へのインパクトは面白くなると考えています。

渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター

2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。